制作・出演 : 中村あゆみ
ひと世代にだけ向けた刃のように聴こえる。それが良くも悪くも彼女の持ち味だろう。マニュアルに従うことにクソくらえすることがパワーの元になっているような彼女なのに、自身がいちばん変わることをしないように思えて止まない。歌詞の改善を頼む。
ポップなアプローチを連想させるタイトルだが、内容はいつもと変わらぬあゆみ節をストレートな8ビートで聴かせる。(2)(4)など運動部の選手を主人公にした“応援団長”そのものの曲、彼女の健康イメージから背伸びした“大人の”ラヴ・ソングが同居。
なんかひとつ振っ切れた感じがするのは私だけでしょうか。中村あゆみ本人はもちろん、気合い入ってますけど、バックのミッドナイトキッズのオールドウェイビーぶりは筋金入りだ。だから、ダンスミックスになった(12)が違和感あるある。
似た芸風の人も出て来て大変だ、と思ったのも取り越し苦労。タイトル通り、1994年で丸10年のキャリアを総決算した初のライヴ・アルバム。バックのミッドナイトキッズの演奏も含め、安定感あり。特に前半部。本家は強靱だな。
1985年デビューし「翼の折れたエンジェル」で一躍女性ロッカーのトップに踊り出た中村あゆみのサード・アルバム。「真夜中にランナウェイ」他全8曲を快調な波に乗り、目いっぱいのパワーで突っ走る。ハスキーな声も彼女の魅力。
たとえ自作曲でなくとも、実に自然に自分のものとして体現できる。そんな作品に恵まれてきた彼女、プロデューサーでもある高橋研に続いて、本作ではエコーズの辻仁成(当時)が詞曲を提供。これがいい。内省的な(ところもある)もうひとつの顔が見えてくるアルバム。
初のセルフ・プロデュース、インスト収録など、話題が多かった作品。音楽的にも、シンセサイザー類を含めた新しい方法論を導入し、バラエティに意欲的に取り組んでいる。曲によってはヴォーカルの不安もあるが、新しい扉を自らの手で、という試みは買える。
歌唱の幅は相変わらずあまりないけど、“肝っ玉おねえ”ぶりがそれを補って余りあるあゆみサン。前作に続く全曲自作詞で、ヴォーカルのノリにも若干の前進が認められるし…。結局すごーい母性的だってことが、ムリのなさを生んだ?
デビューから3年目にリリースされた、妥当な選曲のベスト・アルバムなのだけど、この年頃のガール・シンガーの常として、成長の振幅がくっきり見えてくるのがおもしろい。同系統と言われた渡辺美里の委員長ぽさとはまるきり違う、肝っ玉ねーさんぶりをどうぞ。