制作・出演 : 小川典子
日本人作曲家によるピアノ曲を取り上げたアルバムが好評を博してから4年、ピアニスト小川が再び日本人作品を取り上げた。今回はフルートの曲をフィーチャリングし、珠玉の9曲を収めた。
まずは企画の勝利。よくも集めたりの珍曲・秘曲の数々。文明開化の時代のいかにも異国情緒たっぷりの“日本感”が大真面目で楽譜に書き連ねられている。これを日本人演奏家の感性を介して再現したところが本企画の醍醐味であり、ゆえに相当に好企画。
発売元
キングレコード株式会社17歳のワーグナーによる第9のピアノ用編曲。小川典子は超人的なテクニックで見事にこの怪作を弾きこなしている。第4楽章は、鈴木雅明率いるBCJが少人数ながら厚みのある合唱を披露。ワーグナーの早熟な天才ぶりを確認できる貴重な録音といえる。★
BIS専属契約記念(?)盤。ペッテション=ベリエル(1867〜1942)はスウェーデンの作曲家で、シベリウスらへの舌鋒鋭い批評でも知られた。この曲集は“子供の情景”的味わいを持った佳曲揃いで“懐かしさ”が一杯詰まっている。小川も繊細なタッチで好演。
ムソルグスキーのオペラから数曲と「展覧会の絵」(自筆譜に基づく演奏)が収められている。オペラからの曲は、オーケストレーションされる前のピアノ譜によっている。小川典子がムソルグスキーにふさわしい力強くて重い音楽を奏でている。
ゆったり目のテンポ、決して激さない表現。これまでラフマニノフを“情熱”という言葉で括っていた人はこの演奏を聴くといい。髪振り乱さずとも、そのピアノの背後からは充分にロシアの大地が立ち昇ってくる。必ず“通俗”のレッテルを剥がしたくなる名演。
これは作曲家が西洋音楽を受容しつつ20世紀日本の政治的、文化的風土の中を生きた結果だ。我々にとって軽くない企画(共感と近親憎悪……)と優れた演奏。松平暁則が含まれないことから解るように、ある種の傾向を持った選曲ではあるが。最近流行の感。