音楽むすび | 制作・出演 : 東誠三

会場音がなければライヴとは思えぬ仕上がり。磨かれた音で誠実によく歌い、技巧的にも僅かな一部を除いてほぼ満足できる。ベートーヴェンの特徴である極端なデュナーミクでも、fとpを単純な音量差でなく音色によっても区別する知的な解釈を聴かせる。また各曲の緩徐楽章の格調の高い味わいは特筆もの。★

バッハの無伴奏全曲リサイタルを開くなど意気軒昂な活躍を続ける前橋汀子は、小品の演奏にも積極的に取り組んできた。これは約20年に及ぶ膨大な録音から18曲をチョイスしたベスト盤。通して聴くのも良し、好きな曲をかけるも良し。まさに珠玉の逸品である。

華やかな技巧のなかにそこはかとなく漂う夢幻のようなトーン。リストの小品ならではの独自の魅力が、このアルバムにはセンス良く収まっている。作曲家の抱いた幻想を共有するような東のピアノは、テクニックだけではなくその暖かさをもとらえたようだ。