制作・出演 : 貴志康一
20世紀初頭、ドイツで才能を開花させながら地歩を築く前に30にも届かぬ若さで夭逝した貴志の音楽は、新旧東西さまざまな要素が未だ渾然と混淆する。その貌の多彩さ得体の知れなさに大きな可能性を孕んで遺す。「仏陀」はまさに茫洋魁偉。“無国籍”の大作である。
近年、貴志康一の再評価が活発だ。本盤には彼のヴァイオリン曲6曲と歌曲7曲を収録。日本的雰囲気を醸し出すメロディアスな旋律とロマン派的話法が特長。非常に描写的で具象的で聴きやすい。ヴァイオリン曲は佳曲揃いでもっと演奏されるべきだろう。
28歳の若さで夭逝した貴志康一の代表作2作を収録している。ともに、小松二度目の録音。日本音楽の要素を取り入れたその音楽は、十分に抽象化されてはいないが、貴志の才能は随所にきらめいている。そのまま生きていれば山田耕筰を超えていたかも。演奏は文句ない出来。
夭折の天才作曲家・貴志康一が、1935年にベルリン・フィルを指揮した自作自演のSP盤からの復刻。日本の旋律を使って叙情的に描かれた「日本スケッチ」が興味深く聴ける。フルトヴェングラーに師事した指揮の腕も確かだったのだろう。演奏はきわめて充実している。
バレエ「天の岩戸」は28歳で夭逝した貴志康一の60分にも及ぶ大作。20世紀前半のドイツ音楽の手法を貪欲に吸収し、日本固有の素材を生かした音楽に仕上げる手腕は並みのものではない。今回が世界初演であり初録音。ぜひともバレエ上演を望みたい。
戦前の動乱の時期を余りにも生き急いだ貴志康一という音楽家の「忘れ形見」ともいうべき自作自演の記録。大戦に向けてドイツと日本が急速に接近していた時期とはいえ、未だ25〜6の若輩がベルリンpoを相手に自作を振る。音楽が輝かないハズはない。
貴志康一。1937年、指揮・作曲両面に於いてその豊かな才能を期待されながら、名声確乎たるを待たず28歳の若さでこの世を去った音楽家。vn協奏曲は既に紹介された交響曲と並ぶ代表作で、近代ロシア風の管弦楽書法の中に日本を織込んで華麗である。