志ん朝復活ー色は匂へと散りぬるを り「品川心中」・「抜け雀」
79年に大阪で行なわれた故・志ん朝のライヴである。まだ若々しい色気、愛嬌に満ち、整った口調で浪花の客を沸かせていく。品川女郎のお染が心中の相手に選んだ本屋の金蔵のちょろいこと。後半のテンポのいい追い込みが小気味よい「品川心中」は逸品だ。
関連音楽
「明鳥」は81年4月、「船徳」は79年7月の高座。ようやくCD化されたということに、まず祝盃。文字通り、目に見えてうまくなっていった時期だけに、その躍動感が伝わってくる。噺家の色気というものは、やはり持って生まれるものなのだ、と改めて思う。 1993/12/01 発売
「居残り佐平次」は78年12月、「雛鍔」は81年4月の録音。「居残り」や、まだCDは出ていないが「酢豆腐」のように、何をやっているかわからない風若者を演じると、この人はバツグンの腕を見せる。ちょっと図々しく、ちょっとセコイけど、明るい若者がいい。 1993/12/01 発売
「愛宕山」は78年4月、「宿屋の富」は80年10月に三百人劇場で収録。たいこもちの一八の口先男ぶりが、いやになるほど出ている。チャランポランさの演技に男の色気がプンプン出ている志ん朝ならではの若々しさ。長いこと期待されていたひとの化けぶりを。 1993/12/01 発売
82年12月に本多劇場で収録。ほろっとさせる「文七元結」を、カラッとした気質で演じていく。志ん朝は、べとつきがちな噺を江戸っ子の心意気あふれる口調で展開していく。身につまされる人生訓を、ここまで情にあふれ、笑いの中できかせていくとは。 1993/12/01 発売
志ん朝といえば、四ツ谷にある某ふりかけ屋のCMやってる人でしょ? それくらいの認識しかない人はこのCDを聴くとよろしい。「芝浜」の魚屋、熊五郎といい、「百川」の田舎男、百兵衛といい、キャラクターが目に浮かぶ。明るく楽しい江戸前の落語なのだ。 1995/08/21 発売
「大山詣り」は81年、「粗忽の使者」は82年の三百人劇場でのライヴ。色気のある語り口、テンポのよさといい「大山詣り」は逸品もの。登場人物が若い衆ばかりに聞こえるのは、この時期の志ん朝ならではのもの。「大山詣り」はアルバム初収録ものだ。 1995/08/21 発売
どちらも81年4月17日、三百人劇場での高座。右肩上がりに加速がついた時期だけに、何とも言えないテンポの良さで、落語という話藝の魅力を十分に味わえる。『雛鍔』もそうだが、志ん朝演じるこまっしゃくれたガキのなんと活き活きとしていることか。 1995/08/21 発売
6代目古今亭志ん生がまだ志ん朝だった70年代末に録音された「井戸の茶碗」(1979年)と「今戸の狐」(80年)。前者は良いに決まっているけれど、先代の志ん生と十代目馬生の十八番だった後者が特に巧い。これができる若手噺家が何人いるか。 1995/09/21 発売
現代の名人・志ん朝が、まだ若かった17年前と13年前に録音したアルバムのCD化。タレント活動を止め古典に専念して結果が現われ始めた時期のものだけに、前向きのパワーが感じとれる。うまいと言われ、今の円熟に向かうストレートな意気込みが伝わる。 1995/09/21 発売
先日、志ん生の『佃祭』を聴いたばかりだが、セガレの藝はオヤジとは違った明るさ・軽さを感じさせる。明と暗、静と動の切り替えのテンポの良さにこの人ならではの魅力がある。『搗屋幸兵衛』はお馴染み『小言幸兵衛』の前段の噺で初アルバム化である。 1995/09/21 発売
やぱり志ん朝はいいなあと思う。落ちついた芸だなあと感心させられる。『代脈』は名医が愚かな弟子を代診にやらせる噺。ほどよい愚かさに演じているのが志ん朝らしい。(1)が5パート、(2)が3パートに分れていて聴き直せるのもファンにはうれしい。 1995/09/21 発売
77年から82年にかけての三百人劇場でのライヴ・シリーズ。若々しい色気を発散する登り坂にあった頃の話芸は、とにかく小気味のよいものである。席亭がなくてもやっていける数少ない落語家にすでに出来上がっている。今よりもテンポが多少速いようだ。 1995/10/21 発売
志ん朝の話にはパワーがある。テンポのいい語り口、やわらかな気品、硬軟併せ持つ人間そのものの描き出し方には、ほれぼれとさせられる。おそらくこれがメジャーな落語なのだろう。99年にホールにて収録されたという録音状態の良さも特筆もの。気持ちのいい後味だ。 1999/12/18 発売
噺の刈り込みの巧みさはさすがで、明るくテンポのよい高座を思いだす。ただ、晩年は自身のスピードに乗り損なうときもあった。若々しさと円熟味の齟齬とでもいうべきか。ひょっとしてそのあたりに“志ん生”襲名を躊躇してきた原因があったのでは、とは暴論に過ぎるか。 2002/06/19 発売
色は匂ヘと散りぬるをシリーズの“ろ”の巻で、父親の五代目志ん生も演じた名作。吉原での道楽が過ぎて勘当された若旦那が、思いがけなく悲惨な母子家庭に救いの手を差しのべ人情に目覚める。志ん朝の端正な語り口と若旦那のおっとりとした描写ぶりに名人の味が……。 2002/06/19 発売
故古今亭志ん朝が残した音源。八代目文楽が得意とした噺を志ん朝が若々しい口調の色気で演じている二題を収録。77年の『志ん朝の会』で収録した「酢豆腐」では、知ったかぶりの若旦那が酢豆腐を食べるシーンでのおかしさは逸品。76年の「鰻の幇間」も収録。★ 2002/06/19 発売
いままさに“旬”を迎えた瞬間の音源だけに、テンポのよさ、とくに上下の切り返しの鮮やかさは絶品。「寝床」の旦那は八代目文楽や六代目園生に比べて乾いた演じ方だが、これは自身の年齢を考慮してのことだったのだろうか。そのぶん「刀屋」の徳三郎はハマッているのだが。 2002/07/24 発売
「碁どろ」は、客を相手に碁に夢中の家に泥棒が侵入。碁の好きな泥棒がついつい口出し始めるという滑稽噺で、切れのいいテンポで爆笑を誘う。別れたはずの男が夜な夜な忍んでくる「お若伊之助」には新鮮な色気が漂っている。79年2月20日、三百人劇場ライヴを収録。 2002/07/24 発売
堅物で厳しい番頭、実は粋な遊び人。隠れ遊びを旦那に見つかってしまった番頭はクビかとおびえる。さて旦那は……。江戸時代の商人美学を描いた50分を越える大作で、謹厳実直な小言と芸者遊びの華やかさと、好対照の話芸を軸にじっくり聴かせてくれる。80年の収録。 2002/08/21 発売
81年春の三百人劇場での録音。ジャケ写の若いこと。「高田馬場」は昔の珍商売を紹介するマクラだけで十分に笑わせてくれる。ネタに入ってからも、仇討ちフィーバーに盛り上がる街中の描写に、この人らしい鋭い観察眼を感じる。「甲府い」は淡々とした語り口の一席。 2002/09/19 発売