若杉弘/シュターツカペレ・ドレスデンの芸術
「リエンツィ」序曲。長い導入の分厚く渋い弦の音色。それに続くフォルテの主部、金管の強奏、「ローエングリン」の艶やかな弦……すばらしい。オケの機動力と美質を掌握し、完全に鳴らし切る技術と感性。緻密な解釈に裏打ちされた自然で快い音楽の流れ。80年代、ドイツのオケが若杉弘を最上級の評価で迎えた理由がよくわかる。「英雄」の終楽章。プレストになってもテンポに無理がない。みごとな棒さばきだ。生成りのような肌触りのマーラーもいい。何度聴いても感動する。いまは亡き若杉弘によるかけがえのない遺産だ。