シューマン:交響曲全集
徹底した職人芸というのは、個性だの芸術だのに名を借りた、妙に主観的な思い入れがない。だからオッと耳をそば立てるものがない代わりに、時を経てもあまり風化しないようなしたたかさを持っている。コンヴィチュニーのやり方が正にこれ。ガクタイの親方としてやるべき事をキチンとやって、余分な事は一切言わない。たとえシューマンだって、甘い誘惑なんかに負けないで、ロマンが何たらかんたらという軟弱夢心地路線には走らない。それがオケの古雅な響きとマッチして、何とも剛健な世界を描いていく。
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レコード録音史上、最も素晴らしいベートーヴェン全集のひとつ。古色のイメージが強いが、実際はテンポも比較的速く輪郭も明瞭で、全体の解釈はたいへんに近代的だ。弦楽器も管楽器も、オーケストラの個々の音色がおそろしく瑞々しく、釣ったばかりの魚がはねているように新鮮。録音が古いのに、なぜこのような美しい響きがするのか、まったく不思議としか言いようがない。奇数番号と偶数番号の出来ばえも均衡しているが、あえて言えば第1,2、6番あたりは絶品であろうか。本当に、耳が洗われる思いがする。必聴。★ 1996/11/21 発売