発売元 : 日本伝統文化振興財団
若手バリバリのピアニストなら、もっと鮮やかな技のキレを聴かせたり、自分の“解釈”を強調したりもするだろう。しかし江戸京子は、長い演奏経験により育まれたものを、揺るぎない確信と落ち着きをもって、決然孤高に示していく。まさに大人の芸である。
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日本伝統文化振興財団1957?70年に作曲された現代曲を伝統楽器で演奏している。70年に相澤昭八郎プロデュース、菅野沖彦エンジニアで録音された現代邦楽の名盤の復刻だ。今日の現代邦楽の根幹をなす曲ばかりで、演奏者も同様にその後の現代邦楽を牽引した演者・グループたちだ。
宮城道雄といえば、「春の海」などで知られる箏の名演を連想するけれども、こちらはもうひとつの才能である文章力を活かした随筆集をCD化したものである。いずれも戦後の昭和22年から31年までに出版された作品で、大塚道子、小川真司、中谷一郎、野中マリ子というベテラン俳優による落ち着いた朗読でまとめている。今や歴史的な人物の名前が登場したり、漫才師が鼓を持って演じていたりする、時代を感じさせる記述が興味深いし、関東と関西で雨の音が異なるなど、鋭敏な感性や音楽的な姿勢に触れることもできる。
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日本伝統文化振興財団合唱人には超有名作曲家、木下牧子の歌曲集。最初の歌曲集である「晩夏」から2008年に初演された「父の唄」まで、彼女の思い入れの強い歌曲集三つが選ばれている。三人の歌手はそれぞれに、作品を掌中に取り込んで、的確な表現をしている。小原孝の雄弁なピアノが印象的だ。
1953年?76年にかけて録音されたアイヌ・北方民族の伝統舞踏、伝統歌、ユーカラ、神送りをはじめとしたさまざまな伝統儀式などを収録した歴史的音源の完全復刻、初CD化作品。録音年代を見てもわかるとおり、当然のことながらすでに失われてしまったものもあり、本当に貴重な記録だと言える。しかもアイヌだけでなく、樺太アイヌや、北方民族のオロッコ(ウィルタ)、ギリヤーク(ニヴフ)の伝統芸能やシャーマンの祈りなども聴くことができる。時代とともに次第に失われていくアイヌの言葉や歌、踊り……。後世に残したい大切な文化遺産だ。★
ノイズレスSPアーカイヴズ・シリーズとして、1956年に人間国宝に認定されるなど近年の長唄の名人として知られる七世芳村伊十郎の昭和13?14年、四世金五郎、九世伊四郎時代の音源が初復刻・CD化された。3枚とも30歳代半ばの若さに円熟味が徐々に加わり始めた時期だけに、後の伊十郎節の基盤がどのようにつくられていったかを知るうえでも貴重な音源。歌舞伎好きを自認する若い世代にも、その面白さをより実感するために長唄を聴いてほしいところ。3枚いずれも、お馴染みの作品が収録されているので、決して敷居は高くないはず。
『虚無僧尺八の世界』シリーズを展開・発表している中村明一(箏と尺八による編成のKokooを率いる)が、京都・明暗寺に伝承されている尺八曲(対山派)を演奏。禅の修行に根ざしていた虚無僧尺八曲が、読経と同じ行為であったのだと気づかされる演奏。
アイヌの聖なる儀式“熊のイヨマンテ”の模様をドキュメンタリー音源などで綴った記録。二風谷アイヌ文化博物館の館長だった故萱野茂氏のわかりやすい解説、ウポポ(座り唄)や祈り詞なども収録、故安東ウメ子の声とおぼしき歌も聴けるなど、民俗学的にも貴重。★