発売元 : 株式会社フォンテック
北のオーケストラならではの作品に対する共感を紡ぎだそうというシリーズ、第2作。DSD録音、ハイブリッド盤仕様でその空気感も十全に体感されよう。このディスクを含め、日本のオーケストラ録音を積極的に援助しているローム・ファンデーションの仕事ぶりにもエールを送りたい。
バイロイトをはじめヨーロッパ各国の主要歌劇場や音楽祭に出演し続けている世界を代表するメゾ・ソプラノのひとり、藤村実穂子の意外にも初のソロ・アルバム。本作は2009年の日本公演からドイツ歌曲を集めたライヴ録音で、舞台で鍛え上げた表現力をベースに、いくぶん抑制された歌唱が胸をうつ。
シューマンが愛娘マリーのレッスン用に作曲した「こどものためのアルバム」。一曲ごとにタイトルが付けられた可愛いらしい曲はいつ聴いても楽しい。石井晶子は典雅な指使いで各曲を慈しむように丁寧に弾き進める。終曲に向けての淀みない流れなど実に美しい。
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株式会社フォンテック『平家物語』の抜粋が短く朗読され、これを挟むかのように雅楽が演奏される。1200年頃に書かれたと思われる『平家物語』と平安期の雅楽の楽譜による演奏のジョイントとなっている。琵琶で語られることの多い『平家物語』だが、こうした趣向だと、きらびやかな色あいの物語でもあることが浮かび上がる。
時は2010年の6月、楽団創立50周年とそれを記念した100回目の定期のライヴである。隅々まで指揮者の耳と棒のコントロールを行き届かせ、音楽の起承転結も明快に、名匠・秋山和慶の指揮が冴えわたる。この高い洗練度はなかなかの聴きものである。
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株式会社フォンテック九州ゆかりの作品を多数残した團伊玖磨の、新旧二つの管弦楽付き合唱曲。ソロを含む「筑紫讃歌」は50分に及ぶ大作で、よく知られる「筑後川」からは30年の年月を経ているが、同系統の穏健な作品。素朴で雄大なハーモニーにあふれる楽曲を、地元の団体が情熱をこめて歌いあげる、幸せな時間が刻まれたライヴだ。
新潟市民芸術文化会館“りゅーとぴあ”が開館以来試みを続け高い評価を得ている、市民創造ミュージカルの劇中曲2曲。賛美歌を思わせる優しいメロディが心に響く「明日の朝、神様がいらっしゃるよ」、男子によるソロ中心の、勇ましくも可愛らしい「飛び散る火の粉は花吹雪」、どちらも児童による真摯なソロが印象的。少人数ながら澄んだ音色の合唱も素晴らしい。
音の細部に過度に入れ込まず、情の息づかいに率直にシンクロしてウタと響きを気持ちよく起伏させていく。巧みさや新奇さよりも、うーんシューマンいいね、と音楽に浸らせる好演。懐かしいようだが、シュトラウス2楽章の密やかさなど、清新さにも事欠かない。
派手なウケ狙いなどせず、あくまで真摯・誠実に演奏をする。渋いといえば渋いスタンスではある。ではマジメなだけが取り柄の退屈な演奏かと言われれば、そうではない。職人的な精密さを積み重ねた末に、自然な音楽が湧き上がる。それこそが非凡なのだ。
大谷淳子のソロ・デビュー・アルバム。大谷はパリとジュネーヴで研鑽を積み、二つのオーケストラの首席も務め、スイスを拠点に活動する。意欲的なデビュー作で、繊細で美しい音を持っている。作曲家個々の音色感なども的確に出している。ピアノがまた表情豊かで、なかなかいいアルバムだった。
70年、ヴィエール室内合奏団として創設以来40年、関西フィルは記念すべきアルバムを完成させた。指揮は関西フィルを率いて10年の飯守泰次郎。内声部まで気配りされた室内楽的な響きが特長で、飯守は団員の意欲を巧みに引き出し、まさに職人芸のような指揮振りを見せている。
朴葵姫(パク・キュヒ)は韓国生まれのギタリスト。日本で学びウィーン国立音楽大学在学。ギター大国である日本の技術を十全に習得したのがうかがえる演奏だ。マンゴレやレニャーニ、タレガなどの玄人受けする曲を軽々と快演。中でもスカルラッティは絶品。有望な新人である。
男声合唱による林光作品集という、実に嬉しい企画。頑張って歌っている男子高校生には最大級の賛辞を送りたいが、いかんせん作品の持つ高いハードルはさすがに超えられなかった。音程・歌唱ともちょっと苦しめ。独唱パートも、専門家に委ねることで、良い化学反応が期待できたはず。