1999年12月23日発売
故若原一郎のステレオ録音。持ち歌以外も入れた昭和29年の(11)から後年の歌までが収められている。昭和20年代の国民歌謡的な折り目正しさに軽みを加えた青春歌謡。アメリカンポップスの影響もみられ、最初期の日本的ポップス歌手の1人だった。
SP音源で東海林節がタップリ楽しめる。(1)〜(6)はなんと西村小楽天のMC(?)入り。名調子に乗って、名調子の登場というわけだ。こんなに贅沢していいのだろうか、いう気さえする。芝居が庶民の話題の共通項として生きていた最後の時代の流行歌だ。
SP原盤からのCD復刻で、ヘッドホンを使うと多少雑音が入るが、スピーカーで聴く分には気にならず、むしろフワッとしたスタジオ・エコーが懐かしい。前半の中国を舞台にした楽曲は、軽快なリズムとモダンな感覚の歌声・演奏が生き生きしている。
歌謡曲のシンガー・ソングライターだった林伊佐緒の再録ヴァージョンによる全曲集。(8)は昭和12年のオリジナルでは新橋みどりとのデュエットだったのが、ここでは大月みやこ。美味しそうな要素をなんでも取り込んでいく歌謡曲本来の貪欲さが輝いている。
音楽学校で声楽を学んだ世代の典型と言えるモダン派の歌謡曲の歌唱スタイルを松島詩子に見ることができる。歌の情感に時代のリアリティを持たせながら、より美しく歌っていくテクニックは見事。(8)のラテン・アレンジが今では演歌の手法になっている。
昭和10年代から活躍してまして、キングレコードへは戦後20年代の前半頃いました。その甘いマスクと歌声は、ビロードの声と言われて女性層に絶大な人気をほこっていた。(11)はちあきなおみのカバーが、最近車のCFで使われています。オリジナルもいいぞ。
昭和23年の最初のヒット(11)から昭和26年の最大のヒット(1)を経て、だいたい20年代でその歌手生命を終え、自身の生命をも36年に絶ってしまった、悲劇の歌手津村の絶頂期の録音。高音の美しい歌手だが、歌唱法がちょっと古かったんだろうか。録音データなし。
鉄道省(今風にいえばJR)から歌手に転向した人。主に活躍したのは(2)をヒットさせた昭和12年(1937)から終戦の頃まで。大当りした「九段の母」はない(会社が違う)けれど、今ではほとんど聴けない20曲が原盤の音で入っている。その意味でも貴重な1枚だ。
昭和24年(1949)からほぼ10年間キングに在籍した三絛町子。これといったヒットには恵まれなかったけれど、そんな中での(1)は彼女が放った大ホームラン。オリジナル原盤の使用だから、やわらかくてなめらか、そして張りのある当時の若々しい歌唱が楽しめる。
昨年は『琉球の風』なんてドラマがありました。仲宗根さんは沖縄出身ですね。(1)が一番のヒットです。もちろん彼女がデビューした時は、沖縄臭を消してのデビューで、ここでも沖縄の曲が入っているけれど、日本に媚びているところが哀しい。録音データなし。
安藤昇を彷彿とさせるジャケの写真と(8)の「指切りの街」というタイトルから、アチラ方面の人かとも思いましたが、それは誤解。ホントは歌手生活35周年を迎える本格派演歌歌手です。「猫とカツオ節」なんて曲も歌っちゃってるけど。結構軽めの味わい。
伸びやかな童歌風、民謡調、金田星雄とのデュエットによる青春歌謡など、モノラル時代の懐かしい楽曲((3)〜(11))まで収録した全曲集。小宮の歌曲斉唱といった初々しい歌唱から、こぶしを効かせた豪快なスタイルまで、豊かな歴史が刻み込まれている。
(2)(4)からも想像つくように、主に東京オリンピックの前後に活躍した人だ。僕には郷愁の歌手である。ビッグヒットの(1)はいまでも時々耳にするが、「女心の唄(バーブ佐竹)のアンサーソング」みたいな(8)は本当に久し振り。たちまちあの頃にタイムスリップする。
エネルギッシュでパンチの効いた迫力のある歌唱が身上の竹越ひろ子。この人にはちょっぴりやくざで世をすねた退廃的な歌がよく似合う。ヒットした(1)もそうだが、さしずめ(8)などはその代表格。エキゾチックな中に哀愁を漂わせ、デカダンをタップリ歌い上げる。