著者 : アルベール・カミュ
この新訳『ペスト』は、新型コロナウィルスが人類史上初めて全世界に蔓延して、なかなか終息しない中で、アルベール・カミュの『ペスト』が改めて話題になったことが引き金である。第二次世界大戦直後の一九四七年にフランスで出版され、一九五〇年に日本語訳が出た『ペスト』は、当時、戦争やロシア革命やユダヤ人問題といった国家間の対立に背を向けた時代錯誤の小説と思われた。あの当時、東西冷戦や紛争の中に埋没した『ペスト』は、実は、政治思想や体制の異なる国々に、いわば平等に災厄をばらまく病気が蔓延するという未曾有の出来事が起こりうることを予言していた。今日のコロナ禍のなかで、われわれはその先見性に改めて驚いた。原文を最後まで読みすすめると、アルベール・カミュが今、自分たちが見ている世界の現状を予知しているかのような作品を七十三年も前に書いていることに感動を新たにした。今回、この新訳をもって同時代の日本人の皆さんにもう一度『ペスト』を読み返してもらう機会にしていただければ幸いである。
アルベール・カミュ『追放と王国』所収の短編を鮮烈にビジュアル化!美しくも過酷な砂漠のなかの丘に立つ小学校。原初的光景のなかで、不信と信頼、憎悪と友愛、孤独と連帯、自由と責任、沈黙と言葉とがぶつかり合い、希望と絶望が交錯する。卓越した色彩感覚のフェランデズがあなたに届ける切ないばかりに黙したカミュの世界。
カミュの到達点が、今、ここに!永遠に輝く少年の日々の回想、そしてほろ苦い悔恨。記憶にない父、聴覚障害のある母、専制君主としての祖母…教師の助力により進学し、やがて有名作家となった主人公はみずからが、何ももたない種族に属することを発見する。フェランデズのみごとな構成力によって、難解な遺作小説が初めて、生き生きとした「完結版」に!