著者 : アンドル-・H.ヴァックス
女はバークの手を借りたがっていた。彼女の名はボンディー。職業はヌードダンサーだ。しかし、ダンサーとはいっても、彼女が踊るのは酒場のステージではない。場所は高級アパートメントの一室。そこには、ハイテク装置を駆使した専用ステージが配置されている。観客はただひとり、向かいのビルの窓から彼女のプレイを覗き見る、変態野郎だけだ。ボンディーの依頼は、その変態野郎に一泡吹かせてやることだった。男はボンディーのプレイをひとり愉しんでいるのではなく、友人と一緒に眺めながら、嘲笑っていたというのだ。やつに復讐してやりたいの-それがボンディーの願いだった。バークはファミリイとともにボンディーの背景を調べはじめる。やがて彼女の背後に、オレンジ色の目の女ボディーガードを従えた、謎の弁護士カイトの存在が浮かび上がる。ボンディーはカイトがバークに放った餌に過ぎなかったのだ。やがてカイトは、莫大な金を積み、バークにある「調査」を依頼するが…現代社会に巣喰う唾棄すべき悪をアウトロー探偵バークが断つ、シリーズ堂々の第九弾。
魔都ニューヨークへ戻ってきたバークの許に、NY市警殺人課の女刑事ベリンダが会って頼みたいことがあると執拗に連絡してきた。一方、バークは幽霊ヴァンの一件以来、ベリンダと同じ殺人課の鬼刑事モラレスにもつきまとわれていた。バークはとりあえずベリンダに会うことにした。彼女の頼みというのは、連続レイプ殺人犯として逮捕されたジョージ・ピアソルは冤罪であり、それを証明するのに力を貸してくれということだった。彼女によれば、ピアソル逮捕の直接のきっかけになった事件には矛盾があり、署内の人物によって細工が施された形跡があるらしい。しかも驚いたことに、その人物はモラレスだと彼女はいう。バークは弁護士も加えてピアソル本人に会ってみたが、そのときのピアソルを見つめるベリンダの視線が妙に気になった。半信半疑のままバークは、馴染みの新聞記者や仲間たちとともにモラレスの過去や行動を調べていくと、たしかに、モラレスが真犯人ではないかと思えるような性向や事実がわかってきた。しかし、どう考えても、バークにはしっくりこなかった。そしてバークは、ベリンダの性急な働きかけとモラレスの圧力をかわしきれないまま、油断ならぬ無気味な空気をひしひしと感じさせられていく…。
コネティカットのランディー・ケンブリッジという十九歳の若者からバークに仕事の依頼が入った。ランディーの母親は、昔バークがロンドンで知り合ったクラブのウェイトレス、チェリイだった。バークは若者の話を聞いてやった。彼は最近、自分の周囲で十代の友人の自殺が続いているが、自分も死ななければならないような気がして不安だからボディガードをしてくれという。いまひとつ釈然としない話だったが、バークはコネティカットに赴き、調査をすることにした。母親が海外出張中のランディーの家には、ファンシイという三十代前半の女が出入りしていた。彼女は最初から思わせぶりな様子で、バークをSMプレイに誘うが、バークは肉体は支配できても心までは支配できないことを思い知らせた。そしてファンシイにはチャームという双子の妹がいて、少女の頃、父親からひどく虐待されていた。一方、依頼人のランディーと日を過ごすうちに、バークは気のいいこの若者に好感を抱くようになった。バークの調査が進むにつれ、自殺した若者たちに共通する事実も判明した。それは、彼らが精神科医ドクター・バリモアの診療所に通院か入院をしていたという事実で、背後には残忍かつ非情な秘密が隠されていた。NYのアウトロー探偵バークとその仲間たちが三年ぶりにカムバック。ノワールな味わいを強めて再開する人気ハードボイルド・シリーズ第七弾。
彼の名はジョン、あるいはゴーストとも呼ばれている。一切の武器を持たないハートレスな殺し屋だ。精妙な感覚と異様な剛力を秘めた自分の両手が唯一の凶器。そのまがまがしい手で、請け負った仕事を確実にこなしていく。しかし、仕事以外のことには関心も知識もなく、しかもひどく無口なので、他人からは頭が弱いと思われている。そんな彼が初めてシェラと会ったのはシアトルのストリップ・バーだった。彼女は店の踊り子で、ふたりは互いに相手が同種の人間であることを嗅ぎ取り、美人局のコンビを組んで、デンヴァー、ヒューストン、ニューオリンズと放浪の旅をつづけた。ところが、タンパという町でふたりは殺人事件に巻き込まれ、シェラは失踪、ジョンは殺人犯として刑務所で三年間すごした。出所後ジョンは、姿を消したシェラを捜し出すことしか頭になかった。しかし、手がかりは全くない。何としてもシェラと会い、逃げた理由を直接聞き出したい彼は、どんな危険な仕事も引き受けながら、シェラ捜しの旅をつづけた…。
九歳の少年ルークは“悪魔の子”だった。これまで自分の弟や幼児を刃物でめった刺しにして殺していた。しかし、日頃はおとなしく、天才的なIQをもつ彼は、自分が殺人を犯したことを全く覚えていない。両親から凄惨な性的虐待を受け、その苦痛と恐怖がトラウマとなって多重人格者となり、自分の知らぬ人格が凶暴な殺人者となるのだ。むしろルークは、子供を弄ぶ残虐な大人たちの犠性者だった。ルークと同じように幼児虐待の辛い体験をもつ探偵バークは、治療センターに保護監禁されている少年のために敢然と立ち上がる。真の“悪魔”をさがしだし、彼らに代償を払わせなければ、バーク自身も自分の過去との決着がつかないのだった…。魔都ニューヨークに暗躍する無法の探偵バーク・シリーズ第6弾。幼児虐待をテーマに現代の犯罪と悲劇を追求してきた人気ハードボイルド・シリーズ最終作。
ベルは死んだ、フラッドは行ってしまった。傷心の日々を送るバークのもとへ、かつてのムショ仲間ヴァージルの妻レベッカが訪ねてきた。いとこに頼まれて預っていた少年ロイドが連続狙撃事件犯人の容疑をかけられ、ヴァージルとともに逃亡したという。おれの問題の答えを出せるのはバークしかいない、というヴァージルのことづてを聞いたバークは、ニューヨークを離れインディアナへ向かう。そこでバークは狙撃事件で妹を殺され復讐を誓う金髪女ブロッサムに出会い、ヴァージル一家とともに真犯人に罠をかけるべく、計画に着手する…。家族の絆、少年の自立をモチーフに、住み慣れた街を離れ仲間と別れて狙撃犯を追うバークの行動を描く。新境地を拓くアウトロー探偵バーク・シリーズ最新作。
愛しのブルー・ベルへの想いを断ち切れないでいる無免許探偵バークのもとへ、幼なじみの女性キャンディから突然連絡が入った。10代の頃の遊び友だちだった彼女と20数年ぶりに会ったバークは、いまは超一流の売春婦となった彼女の変貌ぶりに驚く。彼女にはエルヴァイラという名の15歳になる娘がいて、目下、とある秘密教団に囚われているので救い出してほしいとバークに依頼してくる。前科27犯の私立探偵バーク、怪力の音なしマックス、メカの仕掛人モグラ、予言者プロフェット、粋なオカマのミシェル…。ニューヨークの暗黒街にその名を知られたアウトロー軍団の捨身の活躍。傑作『ブルー・ベル』でファンの心をつかんだ注目の鬼才が放つ、人気沸騰のシリーズ最新作。今回はあの恐怖の殺し屋ウェズリイが登場。