著者 : ウィリアム・L.デアンドレア
激動のうちに20世紀も暮れようとするなか、フランスの大富豪ピエール・ベナック男爵は私財を投じて国際科学オリンピックを開催した。アルプス山中のリゾートタウンは一躍、全世界のすぐれた頭脳を集めた科学の祭典の場となる。しかし、ある朝聖火台の炎に焼かれている科学者の死体が発見されるにおよんで、この世紀の大イベントは恐怖と迷信と死の交錯するおどろおどろしい悪夢に変貌するのだった。つぎつぎに起こる殺人事件。その残虐な手口と満月の夜に限られた犯行から、狼男への恐怖がつのっていく。そんななかで、アメリカから天才的素人探偵が事件解決に赴く。『ホッグ連続殺人』いらい、ひさびさのベイネデイッティ教授の登場である。
手始めは、少年だった。しばらくその頭を清流の中に押さえつけておくだけですんだ。次は、車の修理工。車の下敷きにするだけだった。眠っている赤ん坊はもっと簡単だ。タオルで顔を押さえて窒息死させれば事足りた…ニューヨーク州のある田舎町で、一見何の脈絡もなく人が死んでいった。いずれも事故や突然死とみなされたが,共通しているのは死者の髪がなぜかベっとりと濡れていることだった。誰が何を目的として動いているのか?事件の背後にソ連の謀略〈クロノス〉の存在を読みとった工作員トロッターと見えざる敵との息づまる対決。
英国情報部改革に関する重要報告書の提出を前にして、元情報部長官が謎の失踪を遂げた。彼の報告書が提出されなければ西側の情報網に重大な支障をきたす。事件はソ連側による誘拐か?事態を憂慮した米国情報部は、工作員ベルマンを急遽英国に送りこんだ。捜索を開始した彼は、元長官が失踪したサセックスで奇怪な連続殺人が発生していることを知った。二つの事件の間には何か関連があるのか…錯綜する謎を追うベルマンの前にやがて驚くべき陰謀が浮び上がった!鬼才デアンドリアが『クロノス計画』に続いて放つ異色エスピオナージュ大作。