著者 : キャサリン・マン
大富豪エリオット・スタークの秘書、ルーシー・アンは、身ごもったことに気づいた日、彼の前から姿を消した。あれは間違いだったのよーエリオットを密かに愛し、支えてきたが、ただ一度だけ体を重ねた翌朝、彼の恋人と鉢合わせてしまった。プレイボーイの彼が、結婚をして父親になりたいと思うはずがない。生まれた赤ん坊は何より愛しい宝物だったが、彼のいない寂しさは募る。だが再会の日は突然やってきた。エリオットは不意に訪ねてきて、男らしさと成功者のオーラを漂わせ、子供のために結婚すると宣言した。「僕は情熱的な夫になるよ」熱く見つめられ、体が疼く。だめよ…もう二度と彼と過ちをおかうわけにはいかないわ。
予定日まであとひと月と迫ったある日、急な陣痛に襲われたナオミ。そこに居合わせた元婚約者の大富豪ロイスに励まされながら、玉のような双子の女の子を無事出産し、彼女は感動に包まれた。数カ月前、ナオミは我が子欲しさに匿名ドナーの子を宿し、その後に出会ってすべてを受け入れてくれたロイスと婚約した。だが、彼にはかつて流産を機に去っていった別の婚約者がいたと聞き、その女性と失った子の代わりかと思うと辛くて、やむなく別れたのだった。いまだにロイスの感触、匂い、優しいまなざしを忘れてはいないけれど、今、しばらく双子の世話を手伝うと申し出てくれた彼を前に、ナオミは自分を戒めたー愛を期待したら、また傷つくことになる、と。
子供の頃から病を抱えるイザボーは、母と施設暮らしをした苦労人。周囲に迷惑をかけまいと心に決めて生きる日々だったが、彼女は今、大富豪トリスタン・ミケルソンに胸をときめかせていた。たくましく最高にセクシーだけれど、無骨で口数が少ない。そんなトリスタンが1カ月限定で仕事の手伝いを必要としていたため、イザボーはそのあいだ彼のそばで働くことになったのだ。母の不幸な結婚のせいで、男性との関わり方もわからない彼女に、トリスタンは衝動的なまでに激しく甘い誘惑を仕掛けてくる。仕事、病ー拒む理由はいくつもあるのに、気づけばイザボーは彼に身を任せ、お腹に小さな命を宿していて…。
十代で母と妹を事故で亡くし、自らも癌を患った過去を持つナオミは、ある日、人里離れた場所に立つガラス張りの館を訪れた。ここに住む有能な大富豪、ロイスの協力のもと家業を盛り立て、もう病弱な自分ではないことを、家族に証明したいのだ。でも、世間を寄せつけない彼との交渉は慎重に進めなければ。いざ会ったロイスは、優しく魅力的な男性だった。悪天候でガラスの館に閉じ込められ、ともに過ごすうち、ナオミは孤高の大富豪に強く惹かれ、身も心も任せてしまう。しかし、性急に燃え上がった情熱の余韻も冷めやらぬなか、ロイスが氷のように硬い表情で言った。「きみの本当の目的はなんだ?」
グレンナとブロデリックは恋に落ち、親密な時間を共有したが、犬猿の仲の一族同士で将来の約束もできず、泣く泣く別れを選んだ。歳月は流れ、いまグレンナは彼と望まぬ再会を果たしていたーブロデリックの元恋人が置き去りにした、小さな赤ちゃんを前にして。驚いたことに、この子の父親はグレンナの亡夫の可能性もあるという。彼女は言葉を失った。何度も流産を繰り返し、結局子供を望めない体になったわたしを陰で裏切っていたなんて。いまや石油王となったブロデリックも動揺していたが、やがて意を決したようにこう告げた。「この子を一緒に育てないか」彼の思いがけない言葉に、グレンナの心は千々に乱れて…。
マリアンナは、名家の御曹司セバスチャンと熱烈な恋におち、子供も授かって幸せな結婚をした。だが、ハネムーン中に流産し、子供のできない体になるという悲劇に見舞われる。つらい現実を忘れたくて仕事にのめりこむうち、夫との心の距離は取り返しがつかないほど離れてしまった。最悪の結論に達し、離婚協議を進めていたある日、思いがけない欲望にとらわれた二人は、車の中で情熱を交わす。その後、彼女の身に奇跡が起こったーああ、私はどうすればいいの?離婚成立の日、マリアンナはセバスチャンの目の前で倒れてしまい…。
「結婚しよう」ある日突然、オフィスでボスにそう言われて、モーリーンはあっけにとられた。黒い髪と巨万の富を持つ、冷たい青い瞳の大富豪、ザンダー。だが、プロポーズは愛ゆえではない。幼い娘を亡き妻の両親に奪われないよう、家庭環境を整えるため。彼の心はいまだに亡くなった奥さまのもの…。胸の痛みを抑えて、モーリーンは承諾した。でも、これで私の抱えている労働ビザの延長問題も解決する。少しの間、幸せな夫婦を演じて離婚するだけ。けれども、情熱の一夜を経て、彼への思いは深まるばかりで…。
スターは、安定した仕事もせず引っ越しばかりの両親のもとで育ち、10歳で里子に出された。美しく成長した彼女は高校生になると、逞しくセクシーな隣家の御曹司デイビッドと恋におち、純潔を捧げた。身分違いとスターを毛嫌いする彼の母親の目を盗んでは、重ねた逢瀬。だが、やがてデイビッドが世界を飛び回る生活を始め、二人は破局した。彼とは住む世界が違うのよー実らぬ恋だと何度自分に言い聞かせても、スターは思いを断ち切れずにいた。そんな折、デイビッドが町に戻ってきた。ところが同じタイミングで、スターの両親が金の無心に現れたのだ。スターの困惑を目の当たりにしたデイビッドは、彼女を旅行に誘うが…。
エリカは決意を胸に、生まれ育った北欧の国を離れ、アメリカに渡った。ある大富豪の男性にーおなかの子の父親で海運会社の御曹司、ジェルヴェに会うために。3カ月前、エリカは逞しくハンサムな彼の圧倒的な魅力に抵抗できず、情熱の赴くままに体を重ねた。その結果、身ごもったことを彼に打ち明け、将来について話し合わなければならない。だがエリカが恐れたとおり、妊娠を知ったジェルヴェは即座に言った。「ぼくと結婚してくれ」ああ、イエスと答えられればどんなにいいか。でも無理だわ。だって、彼はわたしを愛してはいなから…。
海辺のレストランで働くクレアはその週末、情熱に抗えずひそかに想いを寄せるハンサムな大富豪ヴィックと体を重ねた。だが避妊に失敗して3カ月半が経ったとき、体の異変に気づく。天涯孤独の彼女のお腹には、新しい命が芽生えていた。ずっと夢見続けた、愛する夫と子供のいる幸福な家庭。妊娠を打ち明ければ、彼はプロポーズしてくれるかもしれない。でも…それは義務感から。私を愛しているからではないわ。クレアは体調を案じる彼に嘘をついたー妊娠はしていないと。ところが、つわりに耐えながら働いていたある日、店で倒れてしまい…?!
体育館で合唱指導をしていた音楽教師のシーリアは、突如歓声をあげた生徒たちの視線の先に目を投じた。マルコム…?そこには、ずっと忘れられなかった初恋の男性の姿があった。18年前、彼女が妊娠に気づいた直後、彼は麻薬組織への関与を疑われ町から姿を消した。赤ちゃんを二人で育てる夢は儚く消え、その後今日まで、マルコムが戻ることはなかった。今や世界的ミュージシャンとなり、巨万の富を得た彼は洗練され、大人の男性の自信に満ちあふれている。そんな彼が、なぜ私に会いに来たの?とまどうシーリアに、彼は言った。ぼくと一緒に世界ツアーに同行しないか、と。
カジノ王の億万長者の夫コンラッドと別居して3年。ジェインは夫を忘れたくて、悩んだすえ指輪をルーレットに賭けた。プロポーズされたときは幸せの絶頂にいたのに、結婚すると夫は、たびたび理由も告げず長期間家を空けた。私は愛されていないー残酷な事実に気づいて家を出たあの日。すべて忘れてしまえたら…。ルーレットが回り出し、息を詰めたそのときだった。コンラッド!ふらりと現れた夫の姿を見て、体がたちまち熱く反応したことにジェインは愕然とした。もううんざり。気分次第でふいに帰宅する暴君に求められるまま、ベッドの相手をするだけの妻なんて。そんな彼女の思いを見透かしたかのように、コンラッドはあざけった。「残りの人生を、僕とベッドを分かち合わずに過ごす覚悟があるのか?」