著者 : クリストファー・プリースト
近未来英国、フリーカメラマンのティボー・タラントは、トルコのアナトリアで反政府主義者の襲撃により最愛の妻メラニーを失ってしまう。住まいであるロンドンに帰るため、海外救援局に護送されるタラントだったが、道中悪夢のごとき不確実な事象が頻発する。彼の現実は次第に歪みはじめ、さまざまな時代を生きる違う男の人生に侵食されていく。第一次世界大戦中、秘密任務を負うことになった手品師、女性パイロットに恋するイギリス空軍の整備兵、夢幻諸島で名をあげんとする奇術師…。語り/騙りの名手プリーストがこれまでの自作のモチーフを美しいパッチワークのごとくつなぎあわせ、めくるめく世界を生み出した集大成的作品。
1999年英国、著名な歴史ノンフィクション作家スチュワート・グラットンのもとに、J・L・ソウヤーなる人物の回顧録原稿が持ちこまれる。第二次大戦中に活躍した英国空軍爆撃機の操縦士でありながら、同時に良心的兵役拒否者だったJ・L・ソウヤーとはいったいどんな人物なのか…。稀代の物語の魔術師が、持てる技巧のすべてを駆使し書き上げた、“最も完成された小説”。アーサー・C・クラーク賞、英国SF協会賞受賞作。
1936年、オックスフォード大学ボート部所属のジャック・ソウヤーとジョー・ソウヤーは、ベルリン・オリンピックに舵なしペア英国代表として出場、見事銅メダルを獲得した。だが帰国後、一卵性双生児の二人の運命は決して交わることなく、一方は空軍爆撃機操縦士として、もう一方は国際赤十字職員として第二次大戦下の混沌たる世界をさまよっていった…。歴史に翻弄される二人の男の人生を虚実入り乱れた語りで描く大作。
時間勾配によって生じる歪みが原因で、精緻な地図の作成が不可能なこの世界は、軍事的交戦状態にある諸国で構成されている「北大陸」と、その主戦場となっている「南大陸」、およびその間のミッドウェー海に点在する島々「夢幻諸島」から成っている。最凶最悪の昆虫スライムの発見譚、パントマイマー殺人事件、謎の天才画家の物語…。死と狂気に彩られた「夢幻諸島」の島々には、それぞれに美しくも儚い物語があった。語り/騙りの達人プリーストが年来のテーマとしてきた「夢幻諸島」ものの集大成的連作集。英国SF協会賞/ジョン・W・キャンベル記念賞受賞作。
北イングランドに赴いたジャーナリストのアンドルーは、彼を呼び寄せた女性ケイトから思いがけない話を聞かされる。おたがいの祖先は、それぞれに“瞬間移動”を得意演目としていた、二十世紀初頭の天才奇術師。そして、生涯ライバル関係にあった二人の確執は子孫のアンドルーにまで影響を与えているというのだが…!?二人の奇術師がのこした手記によって、衝撃の事実が明らかとなる!世界幻想文学大賞受賞の幻想巨篇。