著者 : グレッグ・ベア
はるか未来、容姿も社会体制も変貌しきった人類は、古い歴史をもつ異星種族セネクシと果てしない戦いを続けていた。原始星群をめぐる巡航艦“混淆”で、敵の抹殺だけを教えられて育った少女プルーフラックスはきたる初陣に思いを馳せていたが…。圧倒的なスケールと美しいヴィジョンで人類と異星人との戦いを描いたネビュラ賞受賞作「鏖戦」。近未来、200万の人口を擁する月コロニー。そこにある天然の洞穴を利用した科学施設“氷穴”では、絶対零度達成の実験が進行中だった。ここに、100年以上ものあいだ冷凍保存されていた人間の頭部410個を地球から持ち込み、一大データベース化しようとする新たなプロジェクトが動き出す。月世界での壮絶かつ衝撃的な実験を描いた星雲賞受賞作「凍月」。2022年11月に逝去したベアの真骨頂たる、ハードSFの代表中篇2篇を収録した一冊。
天才数学者ハリ・セルダンは、第一、第二両ファウンデーションの設立に向け、着実に準備を進めていた。若手数学者ガール・ドーニックの帝都トランター来訪をきっかけとして、リンジ・チェン公安委員長によって予定どおり告発され、帝国の滅亡を予言した咎で裁判を待つ身となったのである。すべては心理歴史学の数式の示すとおりに進んでいるかにみえた。だがそのとき、彼の数式では予測できぬ出来事が、トランターで発生していた。それは、ファラド・シンター顧問官によるロボット狩りであった。帝国内で暗躍しているにちがいないロボットたちを捕え一掃することで、シンターは皇帝に取り入り、政敵チェン公安委員長の失脚をもくろんでいたのである。ロボットを見分ける唯一の手段が精神感応能力であると考えたシンターは、強力な精神感応能力を持つ女ヴァラ・リソを使って次々にロボットを抹殺していく。だが実際に殺されていたのは、第二ファウンデーションの要となるはずの精神感応者たちであった…。
ナノテクとセラピーが実現した人類の疑似ユートピアは早くも崩壊の兆しを見せていた。受療前の不安定状態に逆行する“退行患者”が続出、自殺者数も急増を始めたのだ。そのような状況下で、バーチャルな性的産業を牛耳る大資本家が不審な死をとげた。公安局の捜査線上にはやがて、死体と半死者を冷凍保存する巨大な霊廟オムパロスと、その運営にあたる謎の集団アリストス会の暗躍が判明するが、はたしてその真の目的は。
自意識をもつ唯一の量子論理思考体ジルに接触してきた、まったく異質の様式をもつ思考体、ロディとは何者か?バーチャル空間に潜行中のネット娼婦アリスを瀕死に追いこんだ投影体の正体は?退行患者を続出させた病原体蔓延の元凶は?錯綜するすべての謎はやがて霊廟オムパロスに収束する。霊廟内部に侵入した捜査官たちの前に現われた、想像を絶する存在とは…ハードSFの巨匠が新世紀へ向けて放つ、超弩級巨篇。
人類が火星移民を始めて100年を経た22世紀後半。火星市民はナノテクを初めとする先端技術を適度にとりいれた共同体生活を謳歌していた。だが、火星が独立憲法の制定と政治的統一をめざしていたそのとき、母なる地球は密かな陰謀をめぐらしていた。テクノロジーの袋小路につきあたった地球の目的はただひとつー独立にはやる火星を従属化、搾取すること!未曾有の動乱の嵐は、いままさに赤い惑星をまきこもうとしていた。ネビュラ賞受賞。
火星の命運は若き女性政治家キャシーアに託された。困難な地球との交渉にあたる彼女は、かつての恋人だった物理学者のチャールズから、超兵器としても応用可能な“ベル連続体理論”の存在を知らされる。だがそれは両刃の剣だった。その理論の潜在的な破壊力に気づいた地球によって、火星への全面攻撃が開始されたのだ…近未来火星のヴィヴィッドな描写と破天荒なプロットでネビュラ賞に輝いた、ベア畢生の超大作登場!ネビュラ賞受賞。
21世紀なかば、ナノテク技術の飛躍的発展と人格矯正の義務化によって、ついに人類は地球に疑似ユートピア社会を形成するにいたった。おりしもAI搭載の無人探査機が返送するアルファ・ケンタウリ探査報告に沸く巨大都市ロスエンジェルスで、ありうべからざる凶悪犯罪が発生した。高名な詩人が8人の弟子を惨殺、謎の失踪をとげたのだ。特命を受けたLA公安局生え抜きの女性捜査官、マリアは事件の捜査にのりだすが…。
美貌のLA公安官マリアはナノマシンを駆使して詩人の足取りを追い、カリブ海の独立国に潜入するも突然の国交断絶でとらわれの身に。一方被害者の父親の要請で、異端の心理工学者マーティンは詩人の精神へ禁じられたサイコダイブを敢行、異様なる心の迷宮に分け入っていく。そのとき遙か宇宙の彼方では孤独なAIに自我の萌芽が…めくるめくナノテク文明のヴィジョンを人間意識の深淵に重ねて描く、巨匠待望のSF巨篇。
20世紀末、地球は未知の異星種族の手になる惑星破壊機械の襲来を受けて炎上、壊滅した。べつの異星種族に救出された数千人の人々は、太陽の軌道上の宇宙船に収容されて“銀河法典”の教育を受ける。この法典によれば、破壊機械を送り出してほかの惑星を壊滅させた文明は、みずからもまた滅ぼされなければならないという。地球壊滅から八年後、生存者のなかから選ばれたマーティンら八十五人の子供たちが復讐の旅に出た。
“銀河法典”の定めに従って復讐の旅に出た子供たち。母なる地球の仇敵をもとめる旅を続けること五年、ついに探索チームが破壊機械の発進元と見られる星団を発見した。いよいよ復讐のときだー子供たちは勇躍戦闘機を駆って問題の星団をめざすが、はたしてそこで、本当に地球を壊滅させた文明を発見し滅ぼすことができるのか。俊英ベアが奔放な想像力を駆使して壮大に描くSFスペクタクル。『天空の劫火』続篇登場。
カリフォルニアの草原の古びた農家で、少年は四次元空間の視覚的イメージを研究する老科学者と出会った。四次元空間では立方体や球はどんなふうに見えると思う?そう問いかけられた少年には、実際に四次元空間が見えていた。もともと音楽好きの少年は、四次元空間へ音楽のメッセージを送るのだが…。ヒューゴー、ネビュラ両賞に輝く表題作など、人気作家ベアの多彩な魅力を伝える八篇を収録した日本版オリジナル短篇集。
地球上空に忽然と出現した小惑星〈ストーン〉-。未来の地球人がつくったこの巨大な恒星船の内部には、ハイテク都市ばかりか、さらに地球人の想像を絶する秘密がひそんでいた。無限へと通じる超空間通廊〈道〉が発見されたのである。この〈道〉が異星人ジャルトの侵略をはばむために閉鎖されてから40年の歳月が流れた。荒廃した地球と〈ストーン〉、そして〈道〉で、いままた新たなる壮大無比の物語がその幕をあける。
復興をめざす地球と〈ストーン〉の対立が深刻化するなか、かつて〈道〉の彼方に消えたロシア人将校が地球に現れた。その目的は?異星人ジャルトの真意はどこに?〈道〉の神秘を解明すべく、おのれの身を捧げた天才科学者パトリシアの運命は?そして無限の時空をつらぬく〈道〉の再結合は宇宙と人類にどんな運命をもたらすのか?人気作家ベアが前作『永劫』を遥かに上まわるスケールではなつ、ファン待望の続篇登場。
マイケル少年は、妖精の王国でわけもわからずに魔法使いになる訓練を受けさせられた後、やっとのことで現実の世界へ戻ってきた。ほんの数カ月に思えた異世界滞在、現実の世界ではすでに5年の歳月が流れていた。いったいなんのための魔法修業だったのか?マイケルは不審に思いながらも、再び日常生活に溶け込もうとしていた。ところが一息つくまもなく、とんでもない事件が起こり始めた。異世界から現実の世界へと妖精たちが大挙して移動しはじめたのだ!80年代SFの旗手ベアが描いたモダン・ファンタジイの傑作『無限コンチェルト』の続篇。
天文学者アーサー・ゴードンは、友人からの電話に息をのんだ。木星の衛星エウローパが、なんの前兆もなく突如消滅したというのだ。世界各国の調査にもかかわらず、原因不明のまま、次なる異常現象が地球を見舞った。アメリカのデスバレーに忽然と火山ができて、そこから異星人の手になるとおぼしき物体が発見されたばかりか、瀕死のエイリアンまでもが見つかったのだ。だが、この二つの事件を結びつけ、地球と人類に襲いかかる未曾有の危機を予見しえた者は、ひとりとしていなかった…。80年代を代表する俊英が雄渾の筆致で描く超話題作の開幕。
デスバレーで収容されたエイリアンは、冷酷な事実を告げた。新火山が実は邪悪な異星種族の手になる惑星破壊機械であり、今や地球がその標的にされているというのだ!その言葉を裏づけるように世界各地に同様の物体が飛来したばかりか、太平洋には途方もない質量の物体が落下し、海面の急激な低下と水温上昇、大気中の酸素量の危険なまでの増加といった異常現象がたてつづけに発生した。破滅へのカウントダウンがついに始まったのだろうか?現代SFの最前線に立つベアが豊富な科学的アイデアと壮大無比のスケールで放つSFスペクタル。
緊急通信を受け、〈エンタープライズ〉号はブラックボックス星雲にある観測ステーションへ向かった。人工冬眠中の科学者たちが、有害な放射線で致命的な損傷を受けたというのだ。〈エンタープライズ〉号搭載の転送事故修復装置が救命に役立つかもしれない。だがステーションでは、〈エンタープライズ〉号の乗員が予想だにしない、奇怪な出来事が進行していた。
ある高名な映画音楽作曲家の指示にしたがって、深夜の1時にマイケル少年は40年も人が住みついていない屋敷へ侵入した。ところが、彼を待ち受けていたのは不気味な人影。マイケルは死にもの狂いで屋敷を飛び出し、路地の石壁にあった門を通りぬけた。だが実は、その門こそ、妖精と人間、そしてその混血がバランスをとって暮らす異世界への入口だった!戸惑うマイケルの前に現われた3人の老婆は、彼に魔法の訓練らしきものを強要するが…。『ブラッド・ミュージック』や『永劫』で著名な80年代SFの旗頭ブアが描くモダン・ファンタジィ。
地球上空に忽然と謎の小惑星が出現した。直径100キロ、長さ300キロにもおよぶこの物体は〈ストーン〉と名づけられ、アメリカを中心とする調査隊が派遣された。調査隊の報告は驚くべきものだった。-〈ストーン〉は巨大な宇宙船であり、しかも内部に保存されていた資料から見て、“未来の地球人”の手になることが明らかになったのだ!しかもその資料には、これから起こる熱核戦争の結果までもが詳細にしるされているという。だが、〈ストーン〉が秘める謎は、それだけにとどまらなかった…。『ブラッド・ミュージック』で話題の著者が壮大なアイデアで描く力作SF巨篇。
〈ストーン〉をめぐって、国際情勢はいよいよ緊迫してきた。情報の公開をもとめるソビエトが、宇宙軍をくりだして〈ストーン〉に迫ったのだ。それと前後して、アメリカの天才美人物理学者パトリシアが、調査隊によって〈ストーン〉に招かれた。彼女がそこで見たのは、内部の空洞から無限の彼方へと一直線にのびる超空間通廊だった!パトリシアは調査隊と協力して精力的に研究をつづけたが、一方ソビエトは、〈ストーン〉、地球相方でついに大規模な軍事作戦に踏みきったのだ!期待の新鋭グレッグ・ベアが、無窮の時の流れを背景に、雄大に描きあげたSFスペクタクル!