著者 : ジェイン・A・クレンツ
辣腕の投資家ギデオン・ケージが、弟の経営する小さな会社を乗っ取ろうとしていると知り、ハナは休暇中の彼のもとを訪ねた。巨万の富を築きあげたギデオンにとって、今回の買収などただの退屈しのぎに違いない。たくましく自信に溢れたギデオンは、カードの勝負で勝てば手を引いてほしいという彼女の申し出をなぜかあっさりと受け入れ、ハナは奇跡的に勝利する。高揚したハナは気づかなかった。非情な実業家に改心を説くハナに、ギデオンがそそられていることに。そして彼の情熱に煙る瞳で見つめられると、抗えないことに…。
山間の小さな町で育ったセレニティは、町の助けとなる事業を立ち上げるべく、敏腕コンサルタントとして名高いケイレブのもとを訪れる。容赦ない手腕で大金を動かす彼は生きる世界も価値観もセレニティのそれとはまったく違うーそれなのに、彼女は男らしくハンサムなケイレブに一瞬で心を奪われた。そしてセレニティを見つめる彼の目にも、隠しきれない情熱の炎が揺らめいていた。だがある日、セレニティに届いた一通の脅迫状が二人の関係を一変させる。ケイレブは人が変わったような眼差しで彼女を見やると、冷たく突き放したのだ。
「僕たち、結婚してもいいんじゃないかな」唐突で、思いがけないプロポーズに秘書のアンバーは、ボスの真意がつかめず目をみはった。ボスの包容力に安らぎを覚えながらも、男としてのそぶりを彼はいっさい見せなかったから…。しかもアンバーは、ある出来事のせいで、二度と恋愛には夢中にならないと決めていたのだ。ところがボスは、この結婚に情熱はいらないという。意味深な言葉を囁かれ、アンバーの心は複雑に揺れた。
経営者フリンをヘザーは一途に愛したが、彼はあっさりと捨てた。離婚したてのフリンにとって、恋は慰みにすぎなかったのだろう。身も心も引き裂かれて、ヘザーは会社を辞め、家も転居した。その8カ月後、あり得ない、招かれざる客が訪れる。大きな仕事を終えたフリンが、執拗に彼女を捜しだしたのだ。同じ過ちは犯さない。わかっているのに彼に目が吸い寄せられる。しかも、フリンの口から予想だにしなかった言葉がこぼれた。「ヘザー、結婚してくれ。きみだってまだぼくを求めている」だがすぐに、彼が息子の母親役を求めているだけだと気づき…。