著者 : ジョン・クルーズ
逮捕されれば、即座に処刑されるのはわかっていた。スペイン人民戦線の英雄ホアキン・カベッサも、いまでは国家的犯罪者にすぎない。独裁者フランコは彼の首をほしがっている。しかし彼は帰ってきた。14年にもわたる逃亡生活の果て、母は、妹は無事生きのびているのだろうか?それだけを確かめたかった。つかまったとしても、脱獄してみせる。おれは、ロシアの収容所すら脱走したのだから…。
カベッサはスペイン官憲の手に落ちた。だがそのとき、彼の命を救う人物が現れた。CIAの人間だった。命を救うかわりに、ある計画に手を貸せというのだ。やむなく承諾したカベッサは、タンジールにある隠れ家に連れていかれる。そしてそこで彼が見たものは、なんと、クレムリン全体の精巧な模型だった…。時に1953年。灼熱のスペインから厳寒のロシアへ、歴史のうねりに巻きこまれた孤独な男の、最後の闘いが始まろうとしていた。
戦火のアフガニスタン。白旗を掲げ、ヒンズークシの渓谷を登るソ連軍のジープ。車上には、寒村の教師として赴任している妻ポーラを迎えにきたヤクーシェフ大佐がいた。だが、母国と夫に不信の念を抱き、今は反政府ゲリラの首領ハーンに思いを寄せる彼女は同行を拒絶。警告を残し、大佐は去った…。-武装ヘリの機銃掃射、山々に谺する砲声。村は潰滅し、ソ連兵の凌辱を受ける女たちのなかにポーラがいた…。
“聖戦の時は満ちたり!敵を殱滅せよ!”地下抵抗組織〈百合〉を率いる謎の女。神託を下す彼女の身には、預言者マホメッドの子が宿っているという…。-ハーンを指導者とする反政府ゲリラの勇猛果敢な抵抗、思想教育に送り込まれたロシア人女性ポーラの数奇な運命、その夫ヤクーシェフ大佐の野望、紛争を取材するイギリス人カメラマンの心の葛藤…。ソ連軍侵攻直後のアフガニスタンを舞台に展開する感動のスペクタル巨編。