著者 : タニス・リー
パラディスで学ぶためにやってきた青年ラウーランが下宿したのは、凋落した貴族デュスカレ家の屋敷。老婆と馬丁しかいないはずのその屋敷で、ラウーランは美しい娘の幽霊を見る。若くしてこの家に稼ぎ、葬られた娘が語る、呪われたデュスカレ家の物語。遥かローマ時代に遡る悲劇の萌芽。退廃と背徳の都パラディスに潜む恐るべき影。闇の女王が織りなす、奇怪で蠱惑的な幻想譚。
退廃と背徳の都パラディス。この地において男女の別に、いかなる意味があろうか?詩人が手に入れたスカラベの指輪の秘密。両性具有の吸血譚「紅に染められ」。昼間は修道院で働き、夜は少年の姿で悪行のかぎりを尽くす娘。悪魔崇拝を描いた「黄の殺意」。謎の死をとげた美貌の役者が魅入られたこの世ならぬ存在とは。「青の帝国」。幻想の都パラディスを舞台にした中編3編収録。
パラディスは狂える者の都。あるいは、パラディスそのものが狂っているのか。汚染された街パラダイスに住む双子の兄妹。恋人殺しの疑いをかけられたパラディの女画家。役者に焦がれその身を投げ出したあげくに捨てられたパラディスの若い娘。異なる時、異なる世界のパラディス。だが狂気に搦めとられた彼らの運命は歪み、交わってゆく。闇の女王タニス・リーの幻惑に満ちた物語。
パラディスは生者の、半生者の、蘇生者の、死なざる者の都であると同時に、死者の都でもあるのです。婚礼の新床で花嫁が夫の手で殺された。夫が死ぬまで隠し通したその理由とは。(「鼬の花嫁」)周囲の人間が次々と衰弱し死に至るという、不吉な噂が囁かれる女性の正体は。(「美しき淑女」)退廃と背徳の都パラディスに眠る死者の物語8編を収録。闇の女王タニス・リーの傑作短編集。
安らかにまどろむ領主の息子を、怪異が襲った。黒い花の如き蛾が、幼子の体を持ち上げて天井から放り出したのだ。重傷を負い片腕がきかぬまま彼は二十一歳になった。領主の後継ぎゆえに、敵対する家の捕虜を殺さねばならない。古の異教の儀式。だが彼の前に、巧妙な罠が待ち構えていた。幾重にも重なる幻惑と変化。闇の女王タニス・リーの精髄。ダークファンタジーの大作登場。
母であり、父であり、そして神でもある森。“選ばれし者”たる少年は、“森の男”の元で暮らしていた。生贄として“樹”に捧げられる運命。だが儀式が最高潮に達したとき、領主の兵の剣が“森の男”を貫いた。切り倒された“樹”に吊るされた少年は、死は免れたものの、もはや元の彼ではなくなっていた。読む人を惑わし迷宮じみた物語の胎内に虜にする、タニス・リーの真骨頂。
シルヴァーーエレクトロニック・メタルズ社が試作した人間そっくりのロボット。とび色の瞳に赤褐色の髪、銀色の膚をしたシルヴァーはギターをつまびき、ありとあらゆる歌をかなでる。ひとびとは心を揺さぶるその歌をきそって聞きたがった。だが、たったひとつエレクトロニック・メタルズ社にとって誤算が生じた。シルヴァーに恋する少女が現われたのだ!物語の名手が紡ぎだす、少女とアンドロイドとのSFラブロマンス。
「狼」と呼ばれるダイヤモンドを手にした瞬間、美貌の青年ダニエルの運命は変わった。満月が昇るたびに狼に変身し、殺戮を繰り返すようになったのだ。人間たちを血祭にあげながら、ダニエルはダイヤに導かれるように故郷の村へと舞い戻る。懐かしい地で出会ったのは焔のごとく赤い髪の美しい女。ダニエルと女はダイヤの魔力の命ずるままに激しい恋に落ちた…ファンタジイ界の女王が贈る華麗なるロマンティック・ホラー。
かつてこの世が平らかなりし頃、妖魔の王アズュラーンは一時の気晴らしに人間の娘と交わって女児をもうけた。この妖魔の一人娘アズュリアズは長じてアズュラーンの宿敵、惑乱の公子チャズと恋に落ちた。もちろん、これを許すアズュラーンではない。妖魔の王の怒りを逃れて幾世紀も人界をさまよう恋する二人。時には離れ離れになり、また時には姿形を変え、人間として生きるすべを求めながら…。アズュリアズとチャズの狂乱の恋、および妖魔の眷属の魔法にふれた人間の愛と死の戯れを語った、傑作『熱夢の女王』外伝とも称すべき連作短篇集。
妖魔の君、闇の公子アズュラーンは、かつて一時の戯れに人間の娘と交わって世継をなした。だが、闇の公子は己れの種から生じた娘をアズュリアズと名付けただけで後は顧みず、人界はもとより妖魔の都からも遠く離れた幻の孤島に幽閉した。そして妖魔の暦で17年の歳月が流れた時、おそれおおくもアズュラーンの娘を人界に連れ出した男がいたー惑乱の公子チャズである。もちろん、宿敵チャズの奸計を黙認するような闇の公子ではない。アズュラーンは、孤島を脱出するやたちまち恋に落ちた二人の仲を裂き、チャズに恐るべき刑罰を与えるが…。
この世に生まれ出た己れの使命を父たる闇の公子に悟らされ、今やアズュリアズは邪な女神として地上の三分の一を、悪業の数々を織りなす舞台として支配していた。実際、女神の治世は残虐非道を極めていた。というのも女神の冷酷な戯事は、闇の公子の指示に基いて神々の非道や無関心を人間に教えるためのものであったからだ。これを天界の神々が快く思うわけがない。アズュラーンの娘を懲らすべく、地上に派遣したは天使にして戦士三たり。片や、わが娘を守らんと人界へ赴く闇の公子。かくて、妖魔の父娘と天界の使者との究極の決戦が始まった。
シルヴァー・イオナイズド・自動制御・人間型・エレクトロニック・ロボット。-エレクトロニック・メタルズ社が試作した精巧仕様型ロボットのひとつ。とび色の瞳に赤褐色の髪、銀色の膚をしたシルヴァーはギターをつまびき、ありとあらゆる歌を紡ぎだす。ひとびとはデモンストレーション中のかれの歌をきそって聴きたがった。だが、たったひとつだけ、エレクトロニック・メタルズ社にとって誤算が生じた。人間そっくりのシルヴァーに恋する少女が現われたのだ…。近未来を舞台に、物語の名手タニス・リーが情感豊かに描きあげる、少女とアンドロイドとのSFラブロマンス!