著者 : チャールズ・ブコウスキー
ブコウスキーのすべてが濃密につまった奇跡の一冊。つねに社会を挑発し、不穏なまでに暴力的で、あらゆることを嘲り、当然ながらおそろしく不敬。しかし、それはいっぽうで恐怖や孤独あるいはコンプレックスを抱えながら生きていくひとつの術でもあった。あらゆる小さなものたちへの愛を忘れずに生きたアウトローが私たちに遺した反骨と慈愛にみちた悲しくも美しい珠玉の39編。
なぜか酔いどれの私が付添人を務めることになった結婚式のめちゃくちゃな顛末(「禅式結婚式」)。残業だらけの工場を辞め、編集者として再出発した男がやらかした失敗の数々(「馬鹿なキリストども」)。何もかもに見放された空っぽでサイテーな毎日。その一瞬の狂った輝きを切り取った34の物語。伝説的カルト作家による愛と狂気と哀しみに満ちた異色短篇集。
酒、競馬、セックス、そして詩…。これが本当のハードボイルド。正気と狂気のあわいで、孤独と怒りを抱えて、暴力と放浪の日々をすごした男が、唯一無二のことばで、ときにパンクにときにやさしく描きだす、社会の片隅で生きる者たちの物語。
バーと競馬場に入りびたり、ろくに仕事もしない史上最低の私立探偵ニック・ビレーンのもとに、死んだはずの作家セリーヌを探してくれという依頼が来る。早速調査に乗り出すビレーンだが、それを皮切りに、いくつもの奇妙な事件に巻き込まれていく。死神、浮気妻、宇宙人等が入り乱れ、物語は佳境に突入する。伝説的カルト作家の遺作にして怪作探偵小説が復刊。
わたしは五十歳。体重百二キロ。猪首、短足、目は濁り、赤ら顔。郵便局員から作家に転職した、アル中男。そんなわたしのもとへ、女たちは次から次にやってくる。何たるご馳走!-ブコウスキーの忠実な分身、チナスキーが語る、尽きることのないアルコールと女とギャンブルの物語。アカデミックな文学シーンのアウトサイダーにして偉大なるパンクスの傑作長編。
1930年代、ロサンジェルス。大恐慌に見舞われ失業者があふれる下町を舞台に、少年ハンクのハードでパンクな青春を描く。父親の虐待に対する激しい怒り、容貌への強烈な劣等感に苛まれながら多感な思春期を送った著者の自伝的長編。『詩人と女たち』の後、「この時代に辿り着くには時間がかかった。わたしはただタイプライターの前に座ってじっと待った」、そして一気に書き上げられた最高傑作。