著者 : チャ-ルズ・バクスタ-
深夜の市を徘徊する不眠症の作家チャーリー・バクスターは犬を散歩中に友人ブラッドリーに出会う。離婚し落ちこんでいたブラッドリーに、周囲の人々の恋愛体験を基に小説を書くよう勧められたチャーリーは、よそに女をつくって家を出たブラッドリーの最初の妻、勝ち気な美人弁護士の次の妻、元ジャンキーに一目惚れした愛らしい娘、不良息子との折り合いに悩む哲学教授らに、それぞれの最もプライヴェートで、でも話さずにいられない愛の問題を語ってもらい、『愛の饗宴』という珠玉の物語にまとめてゆく-ありとあらゆる愛の形を織りこんだ、おかしくて哀しい究極の恋愛群像劇。全米図書賞最終候補作。
車の販売会社に勤める凡庸な兄ヒューと宇宙物理学者の妹ドルシー。物語はこの二人の人生行路を逆行し、やがてドルシーの誕生の瞬間に至るまでの出来事を主軸として展開される。二人の周辺に出没するエキセントリックな人間たちが演じる奇妙な日常、さりげなくスケッチされる現代アメリカ社会の諸相、折々に引用されるボードレール、ダンテ、ニーチェ、オッペンハイマー。著者は、理論物理学、哲学、宗教、文学、芸術にかんする驚くべき知識を駆使しつつ、さまざまな人物たちが放つ縦横無尽の「光」を淡々と叙述する。著者の創造する時空の淵源に接した読者は、そこに広大な宇宙空間と自己自身の内なる「光」を再発見することだろう。各章ごとに短篇小説的な完結性がみられる作品であるが、全体を通読することによって壮大な心象風景が知らぬ間に形成される濃厚な小説である。USAトゥデイ、ワシントンポスト、デトロイトプレスなど、全米のメディアが絶賛した異色の長編小説。
挫折したピアニスと声楽家の恋を描き、人間と芸術のかかわりに迫る表題作、ぼけかかった妻がぼけてしまった夫の心を再発見する「ホラスとマーガレットの52回目の結婚記念日」、老人に教わった魔法で少年が空を飛ぶファンタジックな「崖」など-。ストーリーの面白さ、テーマの切実さと奥深さ、登場人物の魅力が渾然一体となって、人生の歓びと不思議と恐怖を映しだす。