著者 : ティム・パワーズ
19世紀初頭のイングランド。結婚式を翌日に控え、友人たちと独身最後のパーティを楽しんでいた産科医クロフォードは、ふとしたはずみで、とある宿屋の中庭にあった石像の指に結婚指輪をはめてしまった。ところが、その石像の正体は眠りについていた吸血鬼だったー。クロフォードの行為は吸血鬼との結婚の儀式になってしまったのだ。目覚めた吸血鬼は、クロフォードを自分のものにしようと執拗に後を追いはじめた…。
嫉妬深い吸血鬼の魔手を逃れて大陸に渡ったクロフォードが出会ったのは、やはり吸血鬼の一族に魅入られていた詩人バイロンとシェリイだった。クロフォードたちは力を合わせて自分たちにとりついている吸血鬼を撃退したものの、安息の日は訪れなかった。吸血鬼の一族が総力を結集して襲ってきたのだ。不死の一族とクロフォードたちとの壮絶な闘いがはじまった…。史実と虚構のはざまにくりひろげられる幻妖の伝奇物語。
極貧のうちに死んだ父は、実は大地主の跡継ぎだった。だがどうやら、叔父がその財産を横取りしてしまったらしい。これを知った息子のシャンダニャックは、叔父をさがして船で旅立った。ところが、その船が海賊に襲撃されるしまつ。しかも、彼は海賊と共にフロリダにある〈不老不死の泉〉をさがしにいくはめに…。ゾンビーやヴードゥーの黒魔術師が出現する18世紀のカリブ海を舞台に展開する歴史ホラー・ファンタジイ。
馬にひかれた真紅のシボレーが大通りを走り、通貨は稀少な蒸溜酒、昼夜をとわず武装自転車暴走族が略奪のかぎりをつくす奇妙な世界…だがこれこそ核戦争後の廃墟から甦ったロサンゼルスの姿だった!しかも、妖しげな“儀式”を行なって信者をふやす淫祠邪教が不気味に勢力を拡大している。ミュージシャンのリーヴァスは、かつての恋人がこの教団に囚われたと知り、その奪還を決意した。だが、総本山《奇人宮》への単身潜入した彼を待っていたのは、想像をはるかに超えた異様な光景だった!米SF界に新風を吹きこんだ期待の俊英が暗黒の近未来を描くディック記念賞受賞作。