著者 : トニ・モリスン
彼女が「レシタティフ」を「実験」だと言うなら、本気でそれを意図しているのだ。その実験の被験者は読者であるーー 施設で同室になったトワイラとロバータは、白人と黒人の二人組で「塩と胡椒」と呼ばれていた。 月日が経ち、二人はダイナー、スーパー、デモ集会、レストランで四度再会する。 二人が共有する記憶と彼女たちについて、何が正しいのだろうか? ノーベル文学賞作家、トニ・モリスンが唯一書き残した実験小説。 大好評「I am I am I am」シリーズ第五弾。解説:ゼイディー・スミス 二人の少女はこの世の誰も知らないことを知ってたーー質問をしないこと。信じなきゃいけないことは信じること。 ずけずけと訊かずに広い心で接するのは、気遣いでもあった。 あなたのお母さんも病気? ううん、一晩中踊ってるの。 ふうんーーそして、わかった、といううなずき。(本文より) レシタティフ 「実はあの中にちゃんとした人間がいた」ゼイディー・スミス 訳者あとがき
漆黒の肌を持って生まれたために母から拒絶された少女。成人した彼女は、去った恋人を追って旅に出て、様々な人々と出会う。ノーベル文学賞受賞作家が現代を舞台に描いた贖罪と生まれ直しの物語
元兵士のフランクは戦争の悪夢から逃れられず虚ろな日々を送っていた。しかしある日、妹のシーが勤め先で病床にあるという知らせが彼のもとに届く。シーを迎えに行ったフランクは、ともに帰郷しようと決める。小さく息苦しかった故郷の町、ロータスを出たいがために、昔の彼は入隊したのだが…。1960年代のアメリカを舞台に傷を負った兄妹の旅路を描いた、ノーベル賞作家による静かな慰めに満ちた物語。
1920年代の冬のある日、男が若い女を撃ち殺した。女は男の愛人だった。男の妻は女を激しく憎み、柩のなかの死者の顔に切りかかった。しかし、妻は次第に死んだ愛人のことを知りたいと思いはじめる。都会に暮らす男女のなかに生き続ける、時をさかのぼる憧憬と呪縛。過去、現在、未来を自由自在に往来しながら、饒舌な謎の語り手によって、事件の背景が明らかにされていく。ノーベル賞作家が卓越した筆致で描き出す衝撃作。
誰よりも青い眼にしてください、と黒人の少女ピコーラは祈った。そうしたら、みんなが私を愛してくれるかもしれないから。白い肌やブロンドの髪の毛、そして青い眼。美や人間の価値は白人の世界にのみ見出され、そこに属さない黒人には存在意義すら認められない。自らの価値に気づかず、無邪気にあこがれを抱くだけのピコーラに悲劇は起きたー白人が定めた価値観を痛烈に問いただす、ノーベル賞作家の鮮烈なデビュー作。