著者 : トニ・モリソン
1920年代の冬のある日、男が若い女を撃ち殺した。女は男の愛人だった。男の妻は女を激しく憎み、柩のなかの死者の顔に切りかかった。しかし、妻は次第に死んだ愛人のことを知りたいと思いはじめる。都会に暮らす男女のなかに生き続ける、時をさかのぼる憧憬と呪縛。過去、現在、未来を自由自在に往来しながら、饒舌な謎の語り手によって、事件の背景が明らかにされていく。ノーベル賞作家が卓越した筆致で描き出す衝撃作。
ボトム(どん底)と呼ばれる丘の上で育った黒人の少女、奔放なスーラとおとなしいネル。正反対の性格をもつゆえに、少女たちは固い友情で結ばれた。二人で犯した許されざる罪でさえ、隠し続けられるほどの絆。だが時がたち、ネルの結婚式の日を迎えると、なぜかスーラは町を去ってしまう。十年後に二人は再会を果たすものの、その友情は…。黒人社会の光と影を、女性たちの成長とともに描く、ノーベル賞作家初期の傑作。
彼らは最初に白人の娘を撃つ。残りの女たちについては、ゆっくり片付ければいい。オクラホマの片田舎の黒人だけが住むルービィの町外れの修道院に流れついてきた女たちはさまざまな話を紡ぎ出す。男と女、親と子、富める者と貧しき者、肌の色の濃い者と薄い者、さまざまな相克が現れ出てくる。ノーベル文学賞受賞後5年の歳月を経て発表された現代アメリカ文学の頂点。
カリブ海に浮かぶ雨林の生い茂る小島で、二人は偶然に知り合った。白人の大富豪の庇護を受けて育ちソルボンヌ大学を卒業した娘と、黒人だけに囲まれてフロリダの小さな町で育った青年。異なるがゆえに惹かれあいはげしい恋におちていく。そして異なるがゆえにすれちがい相手を深く傷つけていく。黒人同士でありながら決定的なちがいを持ち合せた二人の、炎のような恋のゆくえは。
1926年の冬、黒人たちのシティ。男が女を撃ち殺した。女は18歳の愛人だった。葬儀の日、柩の中の女の顔に、男の妻がナイフで切りかかった。ジャズの即興のように過去、現在、未来を自由に往来しながら、謎の語り手によって明かされる事件の周辺。深遠や愛の物語に木霊する情熱、詩情、そして官能-センセーションを巻き起こした話題作。
ソロモンは飛んでいった。ソロモンはいってしまった。ソロモンは空を突っ切っていった。ソロモンは故郷に帰った。アメリカ中西部の町に生まれ育った黒人青年ミルクマンは、伝説の歌のごとく自由と幸福を手にすることができるのか。はたして旅の果てに何を見出すのか。生と死の幻想を鮮烈に描く、ノーベル賞作家トニ・モリスンの代表作。全米書評家協会賞&アメリカ芸術院賞授賞作品。
黒人の少女クローディアが語る、ある友だちの悲劇-。マリゴールドの花が咲かなかった秋、クローディアの友だち、青い目にあこがれていたピコーラはみごもった。妊娠させたのはピコーラの父親。そこに至るまでの黒人社会の男たちと女たち、大人たちと子供たちの物語を、野性的な魅惑にみちた筆で描く。白人のさだめた価値観を問い直した、記念すべきデビュー作。
『ビラヴド』-忽然と現れた娘は名のった。逃亡奴隷のセスが、“愛されし者”との願いをこめて、自分が殺した娘のために彫ってもらった墓標と同じだった。壮大なスケールで描く愛と告白の物語。ピュリッツアー賞受賞作品。