著者 : ナイジェル・ウィリアムズ
毒殺魔の十二カ月毒殺魔の十二カ月
うだつの上がらない弁護士のヘンリーは、ある日、日頃から憎々しく思っている醜い妻を毒殺する決心をした。ところが、妻を狙ったはずが見当はずれの人間ばかりが次々と死んで、のどかな郊外住宅地は一転、上を下への大騒ぎに…。あの『ウィンブルドンの毒殺魔』事件から数年後、ヘンリーは相変わらず妻に頭が上がらず、一人娘との関係もぎくしゃくしている。今年こそはいい年にしようと年頭の誓いをたてるが、雇ったばかりの掃除婦をめぐって騒動が持ち上がり新年早々なにやら前途多難な予感。果たして、山であやうく遭難しかけたり、漫画雑誌の通信講座に加入したために死ぬほどの恐怖を経験したり、老女連続殺人に巻き込まれたりと、さまざまなトラブルが…。妻殺しに失敗し、戦々恐々とする中年男の身辺で起きる一年間の出来事を、ブラック・ユーモアたっぷりにつづった小粋な連作短篇集。
ウィンブルドンの毒殺魔ウィンブルドンの毒殺魔
妻を殺そう。そう思いたってからというもの、ヘンリーの頭の中は、太った醜悪な妻をどうやったら始末できるかということで、いっぱいだった。絞め殺す。崖からつきおとす?それとも、自動車に細工して事故に見せかける。いや、毒殺がいい。毒殺こそ、わが大英帝国の伝統と誇りにつちかわれてきた、秘めやかで美的な殺人方法だ。これでいくしかない。手段が決まると、ヘンリーはさっそく下調べをはじめ、タリウムという無味無臭の毒薬があるのを知った。これを料理にふりかければ、健康食品しか食べない妻のエリナーも、なんの疑いももたずに口にするだろう。だが、ヘンリーの細やかな気配りと努力にもかかわらず、妻はそう簡単に毒殺させてはくれなかった。のどかな郊外住宅地を舞台に、さえない中年男が妻をこの世から抹殺すべく、あの手この手の大奮闘をくりひろげる、ブラック・ユーモアたっぷりの英国ミステリ。
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