著者 : ヘレン・マクロイ
夫を転落事故で喪ったアリスは、遺品のなかにミス・ラッシュなる女性の名が書かれた空の封筒を見つける。そこへ息子のマルコムが、美女を伴い帰宅した。女の名前はラッシュ…彼女は何者なのか?息子に近づく目的、夫の死との関連は?緊張と疑惑が深まるなか、ついに殺人が起きる…。迫真のサスペンスにして名探偵による謎解きでもある、ウィリング博士もの最後の未訳長編。
深夜、電話の音でアリスンは目が覚めた。それは伯父フェリックスの急死を知らせる内線電話だった。死因は心臓発作とされたが、翌朝訪れた陸軍情報部の大佐は、伯父が軍のために戦地用暗号を開発していたと言う。その後、人里離れた山中のコテージで一人暮しを始めたアリスンの周囲で次々に怪しい出来事が…。暗号の謎とサスペンスが融合したマクロイ円熟期の傑作。
私用で大学を訪れたフォイル次長警視正は“殺人計画”の書かれた紙を拾う。決行は今夜八時。直後に拳銃の紛失騒ぎが起きたことに不安を覚え、夜に再び大学を訪れると、亡命化学者の教授が死体で発見された。現場から逃げた人物に関する目撃者三名の証言は、容姿はおろか性別も一致せず、謎は深まっていく。精神科医ウィリングが矛盾だらけの事件に取り組む、珠玉の本格ミステリ。
ある夜、自宅近くのたばこ屋でウィリングが見かけた男は、「私はベイジル・ウィリング博士だ」と名乗ると、タクシーで走り去った。驚いたウィリングは男の後を追ってパーティー開催中の家に乗り込むが、その目の前で殺人事件が…。被害者は死に際に「鳴く鳥がいなかった」という謎の言葉を残していた。発端の意外性と謎解きの興味、サスペンス横溢の本格ミステリ。
「ウィロウ・スプリングには行くな」匿名の電話の警告を無視して、フリーダは婚約者の実家へ向かったが、到着早々、何者かが彼女の部屋を荒らす事件が起きる。不穏な空気の中、隣人の上院議員邸で開かれたパーティーでついに殺人事件が…。検事局顧問の精神科医ウィリング博士は、一連の事件にはポルターガイストの行動の特徴が見られると指摘する。本格ミステリの巨匠マクロイの初期傑作。
輝く謎の飛行体を見た者が相次いで死亡する怪事件ー精神科医ウィリングの推理を描いて本格の技巧を示した表題作ほか、荒涼たる世界の終末を美しい筆致で綴り深い感動を呼ぶSF「風のない場所」などの多彩な8篇に、十五年前の事件に決着をつけるため帰還した男が殺人事件に巻き込まれる中篇「人生はいつも残酷」を併録。アメリカ随一の実力派マクロイの魅力を凝縮した傑作選。
家出を繰り返す少年が、開けた荒野の真ん中から消えたーハイランド地方を訪れたダンバー大尉が聞かされたのは、そんな不可解な話だった。その夜、当の少年を偶然見つけたダンバーは、彼が何かを異様に恐れていることに気づく。そして二日後、少年の家庭教師が殺されるースコットランドを舞台に、名探偵ウィリング博士が人間消失と密室殺人が彩る事件に挑む傑作本格ミステリ。