著者 : マイケル・シェイボン
小学校の問題児ティモシーは、いつも突飛なものになりきってしまう。特に彼が狼男になっている時は警戒が必要だ。先生のたび重なる注意も聞かず、彼は女の子に噛みつき、学校は大パニックに…思いこみの激しい少年が引き起こす珍騒動を描く表題作。少年時代の記憶に捕われ、自分は幼児性愛者なのではないかと恐れる教育書の作家が、愛娘の教育に右往左往する姿が滑稽な「グリーンの本」。失業、破産、離婚と重なり自棄になったエディは、別れた妻の祖母から宝石箱を騙し取ろうと企み、家に行った。ところが老婆のとまらない思い出話を聞かされたあげく、一泊するはめに…思うように事が運ばずあせる男に意外な結末が待ちうける「ミセス・ボックス」。家族の人間関係のほころびを繕おうと奮闘する人人の姿が、皮肉な笑いを誘う。現代アメリカを代表する作家の粒ぞろいの9篇。
スーパーヒーローが独裁者から世界を救う!いとこ同士のジョー・カヴァリエとサミー・クレイは、『スーパーマン』の登場で黄金期を迎えたコミック業界で名をあげようと野心を抱き、究極のヒーロー“エスケーピスト”を生みだした。ナチスの魔手が迫ったプラハからここニューヨークへ逃れてきたジョーの体験を投影したエスケーピストはたちまちアメリカじゅうを席巻し、二人は頂点を極める。物語作家のサミーと、卓越した画才を持つジョーは、性格は違うが気も合う最強のコンビだった。しかし非情な戦争が強い絆で結ばれた二人を引き裂き、彼らを別々の運命へと導く…。野心的なふたりの青年の波瀾万丈な人生をパワフルに描くピュリッツァー賞受賞作。
まいった。大学教授で作家のグレイディは危機に瀕していた。書いても書いても原稿が完成しないのだ。そのうえ妻には逃げられ、愛人からは妊娠を告げられる始末。そこへ破滅型の担当編集者クラブツリーがやって来て、事態はさらに混沌としてきた。ひょんなことから、彼はクラブツリーと変わり者の教え子ジェイムズと共に狂乱の週末を過ごす羽目に…書くことに取り憑かれた人々の狂騒をシニカルに描く、ポップ・ノヴェル。
書きかけの原稿が2500枚を越えてもいっこうに収拾がつかず、途方にくれている作家のグラディ・トリップ。彼の長年の編集者でありながら、出版社のリストラでクビ寸前のテリー・クラブツリー。才能はあるがどこかズレてる、創作クラスの生徒ジェイムズ・リアー。三人の神童たちがスラップスティックに繰りひろげる、夜ごとのワイルド・パーティのはてに、一体どんな小説が書きあがるのか?奇才マイケル・シェイボンが、作家をめざすすべての人々に贈る、POPなメタフィクション。
アート・ベクスタイン、ピッツバーグ大学4年、インテリでファザコン、父親はギャングスター。ひと夏のあいだに、風変わりな美少女フロックスとホモセクシュアルの青年アーサーの両方を愛してしまう。いったい自分のアイデンティティとは何か?夏が彼自身を明らかにしていく。