著者 : マイケル・P.キュービ・マクダウエル
核活動を停止させる〈核の毛布〉の発明は、人類に苛酷なエネルギー危機をもたらした。全世界が疲弊し、人々が科学よりも糧を求めた結果、科学者たちは社会から追放された。だがそんな時代にも、星空に耳を傾けることを忘れない一人の天文学者がいた。そしてある日、彼ができあいの個人天文台で受信した天空からの信号は、人類をふたたび宇宙へ船出させる切符となったのである。
人類は極秘裡に、全地球的組織〈パンゲア・コンソーシアム〉を結成していた。彼らは、刻々と太陽系に接近してくる〈送信者〉を出迎えるため、地球軌道上でまったく新しい駆動システムのコンタクト用宇宙船の建造にとりかかる。大宇宙を、ふたたび人間の手に取り戻すのだ。やがて、人類の誇りを賭けた一大プロジェクトは、人類初の恒星間宇宙船を発進させた。迫真の近未来SF。
人類の長年の夢がようやく実現した。太陽系外の星系への植民がついに可能になったのだ。多国籍企業アライド・トランスコンの傘下にあるディアスポラ事業団は、すでに最初の恒星間世代宇宙船ウル号を2083年にイプシロン・エリダニへ向けて出発させた。さらにタウ・セチをめざす巨大な第二の宇宙船、乗員1万人のメンフィス号の完成も目前に迫っている。だが、この宇宙計画に反対するテロ・グループが暗躍しはじめていた…。
星々に憧れ、なんとかメンフィス号に乗に組む1万人の開拓者に選ばれたいと望む人々とは対照的に地球の貴重な資源と人材を宇宙へ送るのは無意味だと考えるグループがいた。なかでも、エレミアに率いられるホームワールドは、宇宙計画をすすめる企業アライド・トランスコンに対しつぎつぎと妨害活動をしかけてくるが…。宇宙開発にたずさわる人々の姿を最新の科学知識を縦横に駆使して迫真の筆致で描きだす力作長篇。
1966年。アメリカ人ウォルター・エンディコットがフィラデルフィアのホテルに滞在中、部屋に異変が生じた。いきなり照明が消え、ラジオの音がとぎれ、フロントへの電話もまるで通じない。しかたなく下へ降りてみるとホテルの様子ががらりと変わっていた。設備はみすぼらしく老朽化しており、自分の泊まっていたホテルとは似ても似つかぬものだった。外に出てみると、そこにはホテルに着いたときとまるで違った風景がひろがっていた。そもそも、ここはフィラデルフィアなのか?真相を追求すべく、エンディコットは街をさまよい歩くが…?
エンディコットの入りこんだのは、彼自身の世界とは様相の異なる並行世界だった。並行世界の存在を知ったエンディコットはこの世界のアメリカ政府に、上院議員の地位と引き換えにその情報を売った。ほかの並行世界に通じるポイントを次々と発見したアメリカ政府は、各世界の資源・情報を収集すべく、現地に秘密工作員を送りこんだ。のみならず大統領ロビンソンは、並行世界の存在を利用して世界を破滅に導きかねない恐ろしい計画をひそかに進行させていた…。多重世界をめぐる国際的陰謀を背景に新鋭が壮大なスケールで描く傑作SF長篇。