著者 : マデリン・ミラー
「あの、人間って、どんなものですか?」 ギリシア神話に登場する女神で魔女のキルケ。愛する者を守り、自分らしく生きようとする、遠くて近い一人の女性として、今、語り直されるーー。世界的な注目を集める作家による魔法のような物語。 女性小説賞 最終候補作 太陽神ヘリオスと女神ペルセの間に生まれたキルケ。父のように力があるわけではなく、母のように美しくもなく、人間のような声を持つ。きょうだいにいじめられ、周りからは除け者にされるキルケは、しだいに神の世界よりも人間の世界に惹かれていく。ただ、彼女は〈魔法〉を使うことができる。その力を警戒する神々によってアイアイア島に追放されるのだが、そこで人間のオデュッセウスと恋に落ちる──。 ホメロスの『オデュッセイア』を反転し、女神であり、魔女であり、そして一人の女性であるキルケの視点からギリシア神話の世界を再話する、魔法のような物語。女性小説賞最終候補作、「ガーディアン」ほか各紙でブック・オブ・ザ・イヤーに選出。 キルケ(Circe)とは アイアイア島にすむ魔女。太陽神ヘリオスとニュンペのペルセの間に生まれた。名前の由来は、「タカ」または「ハヤブサ」と思われる。『オデュッセイア』では、オデュッセウスの部下たちを豚に変えるが、オデュッセウスに挑まれると、彼を恋人にし、部下ともども島に滞在することを許し、彼らが再び出発するときには援助をする。キルケは長きにわたって文学の題材とされ、オウィディウス、ジェイムズ・ジョイス、ユードラ・ウェルティ、マーガレット・アトウッドといった作家にインスピレーションを与えた。 ーー本書「登場人物解説」より
罪を犯して追放された王子パトロクロスは、身を寄せた国で半人半神の王子アキレウスに出会う。当代随一の戦士になると予言された、輝けるアキレウス。当初は反感を持ったパトロクロスだったが、徐々に二人の少年は強い絆で結ばれていく。しかし、16歳のある日に勃発したトロイア戦争は、二人の運命に不吉な影を投げかけたー神々が人間に干渉するギリシア神話の世界を舞台に、英雄アキレウスとその無二の友の生涯を、鮮やかに描き上げたオレンジ賞受賞作。