著者 : メアリー・ライアンズ
もつれた糸もつれた糸
妹の婚約者である伯爵が、 なぜわたしを騙して妻にするの? 大学院生のダーシィは、急に実家に呼び戻された。 なんと、失踪した妹になりすましてほしいという。 イタリア人伯爵ロレンツォとの縁談が決まっていた妹は、 婚約披露パーティを目前に、行方がわからなくなった。 もし破談になれば、父は借金を返すあてがなくなるから、と。 そんな猿芝居が通用する相手ではないと反論したが、 意外やロレンツォは特に疑うふうもなく婚約披露を済ませ、 結婚式の“予行演習”まで強行すると、にやりと笑った。 「実は今の誓いは有効だ。僕らは夫婦になったんだ、ダーシィ」 往年の作家M・ライアンズには隠れた名作が多く、この美しい題名の作品もそのひとつです。ロレンツォの思惑がわからないまま、ダーシィは彼に惹かれてゆき……。夫に横恋慕する女性や、夫の亡き母の秘密に翻弄されながらも、愛を貫くダーシィの姿に涙してください。
カリブ海の嵐カリブ海の嵐
「ぼくはきみが憎い」マットの緑色の瞳がぎらりと光った。「きみに、ぼくが味わったのと同じ苦しみを味わわせてやる」憎しみに満ちた義兄の言葉に、フランセスカは震えあがった。ロンドンからはるばるカリブ海までやってきたのに、8年ぶりの邂逅はぞっとするほど残酷で、禍々しい。フランセスカは、静かに悲しみにうち沈んだ。8年前のあの夜、たしかに義兄と義妹は過ちを犯した。だがあれはもう、過去の記憶に埋めたのではなかったのか。フランセスの脳裏に、15歳の禁断の夜がありありと甦った。
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