著者 : メレディス・デュラン
亡くなった父が経営していたオークションハウスは、美術や工芸品の鑑定を学んできたキャサリンにとって宝物だ。父はこの店の経営権を兄とキャサリンの共同にすると遺言に残したが、彼女には条件がつけられていた。それは結婚しなければ経営に携わることができないというものだ。父なきあとオークションハウスの切り盛りに力を尽くしてきたキャサリンだが、政治家志望の兄は売上を横領しているうえに、店を売却しようとしている。また、自分が政界入りするための足がかりとなるように、彼女を強引に政略結婚させようとしていた。早く結婚して経営権を持たなくてはとあせるキャサリンは、危険な実力者ニックに近付き、便宜上の結婚をしてほしいと申し入れる。単なる取引のはずだった二人の始まりは、やがて大きな情熱のうねりとなり…
オークションハウスの接客係リリーは、かつて窃盗団の一味だった。幼くして両親を失い、叔父に否応なく引き入れられたのだが、普通の暮らしがしたいと切望して教養とマナーを身につけ、ようやく今の仕事についた。しかし叔父には悪事に手を貸さねば周囲の人に過去をばらすと脅され、窮地におちいっていた。子爵クリスチャンは、かつて軍隊に所属していた頃に逆恨みされた敵国の元将軍から家族の命を狙われている。消息を絶った敵の持ち物がオークションにかけられるという情報を得て、調査に乗り出した矢先、リリーと運命的に出会った。悲しい過去をもつ二人は、やがて心を寄せ合うようになるのだが…。RITA賞ベスト・ヒストリカル・ロマンス賞受賞作のシリーズ最新作!
エリザベスは亡き夫の莫大な借金を抱え、人知れず窮地に立たされていた。愛情深く責任感の強い彼女は、領民や使用人の生活を守るため、裕福な貴族との再婚をいったんは決心したが、求婚者に裏切られる。打ちひしがれた矢先に、目の前に現われたのは医師マイケル。上流階級の男性にはない思いやりと行動力に溢れる彼にエリザベスは心惹かれるが、今の窮状を脱するには彼と一緒の未来を夢見るわけにはいかないと、自分の想いから目をそらそうとする。一方でマイケルも、エリザベスの目を見張るような美しさ以上に、身分のわけ隔てなく見せる優しさや機知に富んだ会話に魅了されていた。実は、彼は公爵家の次男で、兄とのいざこざからロンドンを離れ、身分を隠して暮らしているのだがー募る想いとはうらはらに、抱えた秘密のせいで素直になれない二人は…。