著者 : モーリス・ルヴェル
地獄の門地獄の門
愛人の美しい髪の毛への妄執に囚われた男。死んだ男が年下の妻とその愛人に用意した皮肉な復讐。独房で自由と太陽を奪われた放浪者に残されたただひとつの希望。気球で超高空飛行に挑戦した二人を襲った恐怖の出来事…。人生の残酷や悲哀、運命の皮肉を短い枚数で鮮やかに描き、20世紀初めのフランスで絶大な人気を博したルヴェルの残酷コント。第一短篇集『地獄の門』収録作を中心に、新発見の単行本未収録作を加えた全36篇を新訳で刊行。
夜鳥夜鳥
仁術の士モーリス・ルヴェルは稀代の短篇作家である。面桶に慈悲を待つ輩、淪落の尤物や永劫の闇に沈みし者澆季に落涙するを、或いは苛烈な許りに容赦なく、時に一抹の温情を刷き、簡勁の筆で描破する。白日の魔を思わせる硬質の抒情は、鬼才の名にそぐわしい極上の〓〓である。加うるに田中早苗の訳筆頗る流綺。禍棗災梨を憂える君よ、此の一書を以て萬斛の哀〓を掬したまえ。
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