著者 : ラリー・バインハート
真っ黒に塗りつぶされた特別検察官の報告書。それが、何度も噂に上り、疑惑を持たれ、現に証人が二人も消されている司法長官の裏金作りをめぐる調査の結果だった。政治家のスキャンダルはこうしてうやむやのまま終わることが多い。しかし、塗りつぶしのない完全な報告書を入手し公表できれば、灰色の司法長官に致命的な打撃を与えることも可能だ。テレビ記者の友人が私を呼び出したのは、そのためだった。自分の高い能力を証明するため、私はこの危険な仕事を引き受けたのだが…。一介の私立探偵がアメリカ司法長官の裏金スキャンダルに挑む。
報酬は十万ドルー選挙をにらんで、民主党の下院議員も私に調査を依頼してきた、時間も金もかかる仕事で、調査は難行していた。だが、急がねばならなかった。刑務所にいる証人にまで殺し屋の手が伸びできたのだ。証人の息子を殺した犯人たちの行方を探し出すこと。それがこの証人からすべてを聞き出す交換条件だった。情報を得た私はバハマに飛んだのだが…。新しい世代のハードボイルド『ただでは乗れない』で初登場した元ジャンキーの私立探偵トニイ・カッセーラが持てる力のすべてと男の矜持をかけて腐敗した権力に立ち向かう話題の雄篇。
私の追っていた弁護士は、レストランの駐車場で撲殺されていた。800万ドルにも及ぶ横領が発覚し有罪となったが、証券取引委員会にすべてをぶちまけると宣言し、ある場所に隔離されていた男だ。こうなると、不利益を被った法律事務所からの依頼も水の泡だ。誰が何を目的として、彼を葬ったのか。私はいつのまにか事件に深入りし、気づいたときはのっぴきならない状況に追い込まれていた。ウォール・ストリートに巣くう巨大な悪にただ1人立ち向かう元ジャンキーの私立探偵の苦闘。アメリカ探偵作家クラブ最優秀新人賞受賞の傑作ハードボイルド。