小説むすび | 著者 : ロベルト・ムージル

著者 : ロベルト・ムージル

古井由吉翻訳集成古井由吉翻訳集成

神秘主義、象徴主義の極北を、 論理と音韻が共振れする 日本語に移した圧倒的訳業! ロベルト・ムージル「愛の完成」「静かなヴェロニカの誘惑」 ムージル著作集版を底本とし、世界文学全集版「解説」、岩波文庫版「訳者からの言葉」を併録。 ライナー・マリア・リルケ「ドゥイノの悲歌」 『詩への小路』で試みられた散文訳「ドゥイノ・エレギー訳文」全十歌を収録。 解説=築地正明 読者にはたいそう難解な作品を提供したようにおそれられる。しばらく、読みすすんでいただきたい。初めの一節二節をこらえて吟味していただきたい。まもなく、これがこれなりに明解な文章であることに気づかれることだろう。しかも明解さをしだいに解体していく、そのような質の明解さである、と。あるいは明解さをいきなりその正反対へ転ずる、と。その背後にはきわめて厳密な知性がある。そして厳密の知性と超越の感情、きりつめた把握と果てしもない伸長という、独特な結びつきがこれらの作品の基調となっている。そのことを読者はやがて感じとられるだろう。 (ロベルト・ムージル「愛の完成」「静かなヴェロニカの誘惑」/循環の緊張ーー岩波文庫版「訳者からの言葉」より) 誰が、私が叫んだとしてもその声を、天使たちの諸天から聞くだろうか。かりに天使の一人が私をその胸にいきなり抱き取ったとしたら、私はその超えた存在の力を受けて息絶えることになるだろう。美しきものは恐ろしきものの発端にほかならず、ここまではまだわれわれにも堪えられる。われわれが美しきものを称讃するのは、美がわれわれを、滅ぼしもせずに打ち棄ててかえりみぬ、その限りのことなのだ。あらゆる天使は恐ろしい。 (「ドゥイノ・エレギー訳文」より) 【目次】 ロベルト・ムージル 愛の完成 静かなヴェロニカの誘惑 訳者解説 「かのように」の試みーー世界文学全集版「解説」 循環の緊張ーー岩波文庫版「訳者からの言葉」 ライナー・マリア・リルケ ドゥイノ・エレギー訳文ーー『詩への小路』 解説 言葉の音律に耳を澄ますーー翻訳と創作の関係について   築地正明 初出一覧 ロベルト・ムージル 愛の完成 静かなヴェロニカの誘惑 訳者解説 「かのように」の試みーー世界文学全集版「解説」 循環の緊張ーー岩波文庫版「訳者からの言葉」 ライナー・マリア・リルケ ドゥイノ・エレギー訳文ーー『詩への小路』 解説 言葉の音律に耳を澄ますーー翻訳と創作の関係について   築地正明 初出一覧

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