著者 : 三好昌子
叔父のもとで成長した若き藩士、木島龍吾の目は、生まれながらに色を見る力を持っていなかった。その龍吾に、先代藩主は、実の父、兵庫の捜索を命じる。兵庫は出奔後、京で水墨画の絵師浮島狂花として生きていたが、贋作事件を起こして、行方知れずになっていた。狂花の弟子たちを訪ね歩くうちに、龍吾は事件に隠された真相と、狂花の絵の中にある真実を見抜く。それは、兵庫が龍吾と同じ目を持つ証でもあった。
異能の絵師土佐光信は、将軍足利義政から人心を惑わす妖異の謎を解くよう命じられる。御所をさまよう血塗れの女、奇怪な呪詛屏風、影喰らい、笑い小鼓、人の悲しみから生まれた石…。果たして彼が見極めた化生の正体とは。人の言霊や将軍の願望を餌に、争乱の気配にほくそ笑む「鬼」とは。混沌を極める百鬼夜行の時代を描く傑作。
町絵師の子として育った諒は、京狩野家の絵師・五代目狩野永博の許へ弟子入りをする。諒の才能に惚れこんだ永博は自分の娘・音衣と結婚させ婿養子として迎えた。京狩野家の六代目絵師として邁進していたが、妻との関係が冷めていくうちに、諒を兄と慕う幼馴染みの夜湖といつしか男女の関係になっていたー。一方で、「豊臣家の宝」とも呼ばれ、岩絵具にすると深い群青色を出すといわれた幻の輝石「らぴす瑠璃」が京狩野家に密かに伝えられているという噂を耳にする。「絵師とは何ぞや」。その答えを求め続ける男たちと、様々な思惑の中で苦悩する女たちを描いた、書き下ろし時代小説。
侍としての名前と過去を捨て、京で暮らす戯作者・月夜乃行馬。懇意にする板元の満天堂書林で京の名所図会を執筆する行馬は、女絵師の冬芽が描く、哀しき想いを秘めた美しい絵に惹かれていく。同じ頃、行馬の仲間だった侍たちが、行馬が持っているはずの妖刀を振るう辻斬りに遭った、との報せが入る。自分を騙った下手人を探る行馬はやがて、故郷で起きていたある悲劇を知ることに…。
「縁見屋の娘は祟りつき。男児を産まず二十六歳で死ぬ」-江戸時代、京で口入業を営む「縁見屋」の一人娘のお輪は、母、祖母、曾祖母がみな二十六歳で亡くなったという「悪縁」を知り、自らの行く末を案じる。謎めく修行者・帰燕は、秘術を用いて悪縁を祓えるというが…。縁見屋の歴史と四代にわたる呪縛、そして帰燕の正体。息を呑む真実がすべてを繋ぎ、やがて京全土を巻き込んでいく。