著者 : 三宅初江
深夜2時。ラジオから流れるDJの甘い声とショパンの調べ。そう、このDJ、ジョナサン・ウッズこそが私が今必要としている人だわ。クラシック専門のラジオ局WQPBから聴取率アップを依頼されていたキャシーは、ゆっくりとうなずいた。早速彼に会って、局のイメージアップに協力してくれるよう要請しなければ…。キャシーは善は急げとばかりにオンエア中のスタジオにかけつけ、そのドアをそっと開けた。
リー・ブラムウェルは、高利貸デマルコから追われていた。以前から、デマルコをよく知っていたリーは、FBIからデマルコに対する不利な証言をしてほしいと協力を依頼されていた。しかし、デマルコは、その証言を阻止するためには、手段を選ばない男なのだ。ある日、逃亡生活を続けるリーのもとに、ひとりの男が現われた。野性的な瞳と、ひげが印象的な男。彼も、デマルコの手下、それとも…。
2年前に夫を亡くしたソフィーは、幼い双子を抱え、ここモンタナで暮していた。ようやく双子が寝てくれた…。ほっとして外を見ると、見慣れぬ車が隣の屋敷に止まり、男が降り立った。あの家は、この前女主人が亡くなったところだ。見慣れない男が、いったい何の用なのだろう。男は、はじめて訪れる家に勝手がわからず助けを求めるように、こちらに近づいてくる。今、ベルを鳴らさないで!赤ちゃんが起きてしまうわ。ソフィーはあわててドアを開けた。と、そこに立っていたのは、グリーンの瞳に、肩までの長髪、引き締まった体の持ち主だった。
ケンタッキー州レキシントン。サラブレッド牧場に足を踏み入れたレアンナは、故郷に戻ったような開放感を味わっていた。と、柵の向こうに車が止まり男が降りてきた。あのひとは…あのひとは私が探し求めていたひと。そう、5年前のパーティの一夜、熱い抱擁とくちづけで私を酔わせたひと。男の名はトラヴィス・マーティン。この牧場の主だという。なつかしさに微笑みかけるレアンナにマーティンの瞳は一瞬輝いたが次の瞬間、マーティンの態度は冷たく-。
吹雪のメソー谷。雪で動けなくなってしまったエミリーは車中で途方に暮れていた。「おい、大丈夫か?」男の声にエミリーはほっとした。だがその声には聞き覚えがある。カル・マクドナルド。わたしが19の時に思いをつのらせた男。しかし、その恋は苦い思い出となってしまった。エメラルドグリーンの瞳は、以前にも増して輝いていたが-。
「人生なんて不公平よ!」レギュラー出演していたTV番組を降ろされ、しかも、かわりに起用されたのがニワトリだなんて。アミーは腹立ちまぎれにスーパーに入り、ショッピングカートに商品を投げ込んでいった。ところが、いざレジで会計をというとき財布を忘れてきたことに気がついた。慌てるアミー…。その時、後ろから「どうかしたの?」と優しい男の声がした。