著者 : 上野歩
たった一つのどら焼きが、海を越え、時代も越える。少女の切実な願いが胸を打つ感動巨編!製菓学校を卒業した樋口和子は、浅草にある奥山堂の門を叩く。祖父が亡くなる前に作ってくれた特別などら焼きを再現すべく、和菓子職人への第一歩を踏み出すために。だが、待っていたのは男ばかりの職人世界の逆風、なかなか工房に立たせてもらえない年功序列の社会。荒波の中でもひたむきに努力を続ける和子は、やがて一人前の職人になっていく。一方、調べていくうちに、祖父が太平洋戦争に出征していたころ、ある船に乗っていたことを知る。「お菓子の船」と呼ばれていたその船にこそ、どら焼きの秘密があるかもしれない。当時の乗員に会って話を聞いていくうちに、和子は祖父の知らなかった一面を見つけていく。
ヤル気が出る!女子社員のモノづくり小説 就活中のユウ(三輪勇)は、第一志望の商社を最終面接で落とされた。その後、母親が社長を務めるミツワネジ(従業員130名)に正式エントリーして、入社することになった。海外で働きたいと考えるユウにとって、ミツワネジにフィリピン支社があることが大きな志望動機になった。 入社後、ひとり暮らしをはじめたユウ。同期入社は同じく営業に配属された辻の2名だった。ユウは、長谷川螺子兄弟社というネジ会社で三か月の現場研修に入り、「緩み」が生じないようにと、ひと工夫したU字ボルトを作った。 営業の取引先は、ネジを扱う顔なじみの商社ばかりだった。何とか直接メーカーに対して提案型の営業もしたいと思いはじめたユウは、飛び込みでメーカーを回り始めるが、相手にされない。ある日、荒川の河川敷で消波ブロックを作る現場を見たユウは、型枠を締めたり緩めたり簡単にできるボルトを作れないかと考えた。 前例のないことを始めようと行動するユウは、幾度もしがらみと闘いながら、仲間や業界のスペシャリストとともに新しい世界を切り開いていく。 読めばヤル気が出る!新入女子社員のモノづくり小説。文庫オリジナル。 【編集担当からのおすすめ情報】 ネジと真剣に向き合い、こんなにも熱く働く人たちがいる。新入社員のユウの奮闘と中小企業メーカーの心意気に、力をもらえる作品です。就活生をはじめとする大学生や、若手社員に是非読んでもらいたい小説です。推薦コメントは華恵さんです。
自分と父親を捨てて男と出ていった理容師の母親を見返すため、お金を稼げて、女性も通える理容店を開く!子供の頃からの有望を叶えるべく、理容専門学校を卒業したキリ。カットが下手なキリは、ベテラン理容師の千恵子が一人で切り盛りするバーバーチーで修業することになるが、雑用ばかりの毎日。幼なじみの淳平は毎日のように実家に来るし、理容学校の同級生のアタルの存在も気になり始めてー。
小倉ひかりは、父について知りたい、もしかしたらどこかで再会できるかもしれないという思いから、父が勤めていた“株式会社ツブラヤ絞”に転職した。ひかりの父・安太郎は、天才的なヘラ絞り職人だった。ヘラ絞りに夢中になったひかりはめざましい上達を遂げ、数年後にはテレビに出演。さらには、宇宙の謎の解明につながる最先端プロジェクトへの参加の依頼までが舞い込んだー。父親との再会は果たせるのか?思いもよらない衝撃の真実が、ひかりを待ち受ける!
広告代理店のOLだった花丘明希子は、脳出血で復帰できなくなった父親に替わって、花丘製作所の社長になった。しかし、会社は大幅な売り上げ減で銀行から借入金の返済を求められ、資金調達に駆け回ることに。また、同業社の引き抜きにあって五人の社員が辞めていった。そんなとき、大手自動車メーカーから連絡が入る。ライバル企業に発注されていたラジエターキャップに不備があり、仕事が回ってきたのだ。しかし、クリアしなければいけない技術的な壁が!ひたむきに取り組む女性社長の奮闘と、中小企業の心意気を描いた製造業応援小説!文庫オリジナル。
歯学生だった剣拳磨は、親の敷いたレールに逆らって大学を中退し、東京にやってきた。そして、歯学部実習での「削り」つながりで、飛び込みで下町の金属加工会社に就職する。削りには自信のあった拳磨だが、大学でやってきたことが全く通用しなかった。しかし夢中で取り組む内、手作業による削りの仕事が自分に打ち込める世界だと気づく。やがて、社長に技能五輪全国大会を目指すよう言われた拳磨。そこに、中学の頃から立ちはだかってきた神無月グループの御曹司・神無月純也が現れた。自分の会社から多くの選手を出場させた神無月。拳磨は、頂点に立てるのか。
朝丘花。29歳独身です。恋人はボストンに研修留学中。ほんの数カ月前までは、地元の中学校で国語を教えていました。いまは、亡くなった父がつくった家を改築して、プチレストラン『花家』をやっています。素朴な橡の木の大きなテーブルがあるささやかなお店ですが、ひとりで切り盛りしています。メニューはあまり多くはありません。その日ごとに素材を絞って調理します。お店をはじめたきっかけは、ひとりで食事をするのが、とても寂しくなったから…。小説すばる新人賞受賞後三作目となる書き下ろし。