著者 : 中原清一郎
末期ガンで余命一年を宣告された58歳の寒河江北斗。記憶を失う病に冒された、幼い子を持つ32歳の氷坂歌音。男は延命のため、女は子供のために「脳間海馬移植」によって、互いの肉体に入れ替わるが…。
大英博物館に勤務する矢島剛は、大学の同級生ジミーから龍の像の鑑定を依頼される。像は清朝時代の庭園「円明園」から失われた十二支像ではないかと見られていた。矢島は像のデータを収集するが、その直後に像は忽然と消え去る。残されたデータを携え、矢島はかつての教え子で美術品を見抜く特別な才能を持つ段燕霞をパリに訪ねる。かねてから段に好意を寄せていた矢島だったが、ふたりの身には姿無き脅迫者の影が忍び寄る。一方、中国では政権内部の権力闘争に端を発する巨大な陰謀が進行していた。龍の像の真贋を確かめるべく香港に渡った矢島と段だったがー。
幻の狩猟民族の末裔を探索して北海道・知床半島で消息を絶った鴫沢澄夫。大学で考古学を専攻する私は、友人である鴫沢が主宰する北方の狩猟文化をテーマとした研究会にも顔を出していた。姿を消した鴫沢を追って、私は彼に心を寄せていた女性、奈美とともに、北海道に渡る前に出かけていたという新潟と山形の県境の山村へと旅立つ。その地は研究会にも参加していた考古学の権威、環教授がかつて調査に赴いた場所であり、そこで私は鴫沢と環教授の不思議な連環に気づくのだった。人間の存在の根源を問う凄絶なる歴史ミステリの傑作を二十九年の時を経て初文庫化。
大英博物館東洋美術部の責任者である矢島剛は、オックスフォード大学の同級生ジミーから龍の像の鑑定を依頼される。像は清朝時代につくられた壮大な庭園「円明園」から失われた十二支像のひとつではないかと見られていた。矢島は像のある貴族の邸宅に赴き、データを収集して帰るが、直後に像は屋敷から忽然と消え去る。残されたデータを携え、矢島はかつての教え子で美術品を見抜く特別な才能を持つ段燕霞をパリに訪ねる。かねてから段に好意を寄せていた矢島だったが、二人の身に姿無き脅迫者の影が忍び寄る。一方、中国では政権内部の権力闘争に端を発する巨大な陰謀が進行していた。龍の像の真贋を確かめるべく香港に渡った矢島と段の身には…。
記憶を失っていく難病の32歳・女性。末期ガンで余命1年を宣告された58歳・男性。男と女はそれぞれの目的を果たすため、互いの肉体に“入れ替わる”ことを決意した。「北帰行」から37年ー外岡秀俊が沈黙を破る感動長編。