著者 : 中島要
浅草天王町の札差、坂田屋の娘お亀久は、元は男勝りのお転婆だったが、六年前にかどわかしに遭ってから、見知らぬ男と血を恐れ家から出られなくなった。さらには、許婚である材木問屋、万紀の長男紀一郎が紀州で山崩れに巻き込まれ行方知れずに。悲観したお亀久は大川に身を投げようとする。激怒した母は、命の尊さを教えようと、「産婆の神様」と呼ばれる八丁堀のおタネ様の家にお亀久を連れて行く。始めは恐れおののいていたお亀久だが、おタネ様から産婆は女相手の仕事だから男の出る幕はないと聞き、見習いを申し出る。
隠居した老母の恋に振り回される兄妹、跡取り息子の教育に悩む大店の主人、実家の隠し子騒動に苛立つ嫁……。女の幸せは、男次第、金次第なのか? 江戸の商家を舞台に、一筋縄ではいかぬ家族の絆と情愛を描いた痛快時代小説。
元花魁と女中が二人暮らし。出るのは鬼か…。 気っ風と純情ーー江戸の女を描き尽くす著者新境地! 「あんたがお照で、あたしが美晴。何ともお似合いの二人じゃないか。」 お照は義父の卯平に命じられて、亀井町の妾宅で働いている。主人は卯平の奉公先である室町の呉服屋、砧屋喜三郎だ。 喜三郎は手代上がりの婿養子で、妻のお涼に頭が上がらない。そのため、吉原の花魁だった美晴を囲っていることは秘密である。通い番頭の卯平は喜三郎の兄貴分で、自分を引き上げてくれた弟分を守るべく、義理の娘に美晴の世話をさせることにしたのだ。 卯平は「美晴が男を連れ込んだら、すぐに教えろ」とも、お照に命じていた。それぞれが手前勝手な思惑を抱える中、美晴とお照の付き合いは思いがけず深まっていく……。
十五にして両親を失った結は、長屋で首を括ろうとしたところを元芸者の女髪結い・お夕に救われた。ほかに生きる道のない結は、自分の不器用さを恨みながら、お夕のもとで修業に励む。だが、贅沢を戒めるお上は、女髪結いの取り締まりを厳しくするばかり。はたして師弟は江戸の女の幸せを守りぬけるのか!? 気鋭が描く傑作時代小説!
花のお江戸の両国に、芹が女中として働く「掛け茶屋まめや」がある。芹は幼いころ、役者だった父のもとで芝居の稽古に励んでいた。しかしあることがきっかけで、芝居や踊りからすっかり遠ざかってしまう。ある日、芹は久しぶりに心の中で踊りの師と仰いでいる東花円の稽古所を覗いた。ちゃんと金さえ積めばあたしだって立派な師匠に弟子入りすることが出来るのに…。心にうずく妬み心を隠しつつ、踊りへの未練を捨てきれずにいた。そんな時、花円が突如まめやに現れて、意外な申し出をしてきたー。待望の新シリーズの開幕です!!
雷屋の女中、お実乃は十八。宿泊客の世話が仕事だ。割高な雷屋にわざわざ泊まるのは、癖の強いお客ばかり。一本気で働き者のお実乃は、しょっちゅう振り回されている。ある日、客が目の前で謎の死を遂げた。厄介事を嫌い、「病死だ」と言い張る主人の仁八に不信感を抱くお実乃は、真相を探ろうとするが…。幕末の、世情乱れる神奈川宿の、もぐりの旅籠で起こった怪事件の顛末。とくとご覧じろ。
三年前、同心の塚越が殺された。塚越は大店を強請って大金をせしめていたが、その事実は封印された。十手持ちの辰三が姿を消して四年。茶問屋の後家が、芝で辰三に二十両を奪われたという。十手を受け継いでいる文治には、同心の栗山を殺した疑いが向けられる。栗山は、塚越の死には裏があると嗅ぎ回っていたのだ。辰三の行方、そしてすべての真相とは!?
あげる人もあげない人も、もらう人ももらわない人も、チョコが好きな人もそうじゃない人も、なぜか気になる日。心がザワザワする日ー。本命チョコ、友チョコ、義務チョコなど、様々な関係性でやりとりされる“それ”は、ただ甘いのか、ほろ苦いのか…。2月14日をめぐるドラマを8粒詰め合わせた限定アソート、文庫オリジナルで。
十五にして両親を失った結は、長屋で首を括ろうとしたところを元芸者の女髪結い・お夕に救われた。ほかに生きる道のない結は、自らの不器用さを恨みながら、お夕のもとで修業に励む。だが、贅沢を戒めるお上は、女髪結いの取り締まりを厳しくするばかり。はたして師弟は江戸の女の幸せを守りぬけるのか!?
日下雄征は旗本の次男坊、気ままな部屋住みの身だった。ところが、黒船来航で世の中は大騒ぎ。武士として先行きに不安を抱く雄征は、意気投合した戯作者・鈍亭魯文とともに、幼馴染みの切腹騒ぎや爆発した水車小屋をめぐる幽霊話の真相を探ってゆくー。時代の荒波の中で格闘する若侍の成長を描いた、極上の時代エンターテインメント!
江戸の北端、小塚原にある築安寺には、千里眼を持った和尚がいると評判だ。だが、その正体は、食いつめ者の偽坊主。幼なじみの三太と弥吉は、和尚と寺男に扮し、相談に来る者から謝礼をせしめていた。亡き師匠の娘と所帯を持つはずだった噺家が、許嫁が急に心変わりしたと泣きついてきた。(表題作)厄介事を、いかさま千里眼で珍妙に解決。人情味溢れる傑作時代小説。
一膳飯屋の看板娘・お糸は悩んでいた。長年、自分が想いを寄せている着物の始末を生業とする職人・余一にはきっぱりと振られてしまった一方で、浅草田原町にある紙問屋の若旦那・礼治郎からは嫁にきてほしいと言われたからだ。想い人を忘れることが出来ず、悶心とした毎日を過ごすお糸の姿をみて、長屋に住む達平が強引にお糸を余一のもとに連れて行った。余一はそこで自分の壮絶な過去を打ち明け、お糸とは夫婦になれない理由を告げる…。果たして二人の恋の行方は!?話題沸騰の大人気シリーズ、待望の大六弾!!
貧乏長屋のお初と兄の太吉。両親は、騙されて浅草の小間物屋を失い、失意のうちに亡くなった。「必ず店を買い戻そう」と固く誓う太吉が、二十両の有り金をはたいて名品“井戸の茶碗”を入手。だがそれは、真っ赤な贋物だった。弱り果てた兄妹に声をかけたのは、隣に住む赤目勘兵衛。高値で売ってやるという、酒びたりの浪人にどんな策が!?新世代の人情時代小説!
「井筒屋で配られている引き札を、五枚集めたら高価な絹のしごきが貰えるぞ!」「どうやら井筒屋は、配ったしごきの色で美人番付をしているらしいぞ!!」正月早々、江戸の町では開店したばかりの老舗呉服問屋、井筒屋江戸店の噂で持ちきりだ。しかし、巷を賑わす話の裏には、実は隠された陰謀があった…。井筒屋の真の“狙い”とはいったい何なのか!?着物の始末屋・余一が、一膳飯屋のお糸と共にその真相に迫るがー。着物の汚れも、市井の悩みも綺麗に始末する!!大人気シリーズ、待望の第四弾!!
さまざまな夫婦のかたち。立て続けに起こる事件と、ちらつく行方知れずの親分の影。文治とお加代がつきとめた驚くべき真実とはー。巨漢の十手持ちと知恵者の看板娘に、襲いかかる試練。俊英渾身の傑作時代推理長編。
名代の十手持ち辰三が姿を消したのは昨年暮れ。上方の悪党「名なしの幻造」を追ったまま行方がしれない。縄張りの日本橋をあずかる子分の文治だが、切れ者の親分と比べると頼りにならない。辰三の娘お加代が、御用の向きにも口を挟んでくる。心根の優しい大男と跳ねっ返り娘が智恵を寄せ合い、御用の謎を解き明かす。時代小説の新鋭が情感豊かに描く、傑作捕物帖。
長患いを負い目にし、自害を試みた一三を救った若き医者・圭吾。日本橋福島町の長屋に居着き、住人から頼りにされていた。だが、懇意にする薬種問屋の若旦那とのいざこざから、薬が手に入らなくなる。亡き父から託された教えを胸に刻みながらも、圭吾は志を失いかけていた。そこに永代橋が落ち、多くの怪我人が出たとの報せが。小説宝石新人賞作家の長編デビュー作。