小説むすび | 著者 : 中野孝次

著者 : 中野孝次

犬の年 上犬の年 上

自由都市ダンツィヒを悠々と流れるヴァイセル河畔で生まれ育った二人の主人公とやがてヒトラーの愛犬となるシェパードの系譜を軸に、戦前から戦後の「犬の年」(ドイツ語で「ひどいみじめな歳月」の意)の日々が、饒舌と思いつきと悪戯心で、下品で卑猥で、瀆神的に、執拗に何度も繰り返し、語られていく、戦後の世界文学の最も偉大な作家の一人で、1999年ノーベル文学賞を受賞したギュンター・グラスの初期を代表する「ダンツィヒ三部作」の三作目にあたる長編小説。 本作品は、楽園・煉獄・浄罪のごとく全く異なる様相の三部を、三人の登場人物に語らせる構成になっており、上巻では、主人公たちが少年時代の、第一部「一番方」から、戦争に突入していく、第二部「愛の手紙」の途中まで。下巻は、骨の山の悪臭が去ろうとしない、第二部「愛の手紙」の続きから、敗戦の混乱と復興の時代の、第三部「マテルニアーデ」を収録。解説は作家の石沢麻依(2021年芥川賞受賞、下巻に収録)。1969年集英社発行を底本に復刊。 「ダンツィヒ三部作」はグラスの故郷ダンツィヒを舞台にした、自伝的要素が強い3作品のことで、有名な『ブリキの太鼓』は1作目にあたる。また、訳者の中野孝次は、愛犬に本作に登場する犬の名前ハラスをつけ、回想録『ハラスのいた日々』も執筆している。 ◆犬の年 第一部 一番方 第二部 愛の手紙(下巻に続く) ◆訳者あとがき

犬の年 下犬の年 下

自由都市ダンツィヒを悠々と流れるヴァイセル河畔で生まれ育った二人の主人公とやがてヒトラーの愛犬となるシェパードの系譜を軸に、戦前から戦後の「犬の年」(ドイツ語で「ひどいみじめな歳月」の意)の日々が、饒舌と思いつきと悪戯心で、下品で卑猥で、瀆神的に、執拗に何度も繰り返し、語られていく、戦後の世界文学の最も偉大な作家の一人で、1999年ノーベル文学賞を受賞したギュンター・グラスの初期を代表する「ダンツィヒ三部作」の三作目にあたる長編小説。 本作品は、楽園・煉獄・浄罪のごとく全く異なる様相の三部を、三人の登場人物に語らせる構成になっており、上巻では、主人公たちが少年時代の、第一部「一番方」から、戦争に突入していく、第二部「愛の言葉」の途中まで。下巻は、骨の山の悪臭が去ろうとしない、第二部「愛の言葉」の続きから、敗戦の混乱と復興の時代の、第三部「マテルニーアデ」を収録。解説は作家の石沢麻依(2021年芥川賞受賞、下巻に収録)。1969年集英社発行を底本に復刊。 「ダンツィヒ三部作」はグラスの故郷ダンツィヒを舞台にした、自伝的要素が強い3作品のことで、有名な『ブリキの太鼓』は1作目にあたる。また、訳者の中野孝次は、愛犬に本作に登場する犬の名前ハラスをつけ、回想録『ハラスのいた日々』も執筆している。 ◆犬の年 第二部 愛の手紙(上巻から続く) 第三部 マテルニアーデ ◆解説(石沢麻依)

アテネに死すアテネに死す

映画『ボイジャー』原作 世界40カ国で翻訳刊行されている傑作 巨匠フォルカー・シュレンドルフ監督の映画 『ボイジャー』(VOYAGER)の4Kレストア版が、今年6月から東京・シネマート新宿、Stranger、恵比寿ガーデンシネマ他、全国で順次公開される。主演はサム・シェパード、ジュリー・デルピー。これにあわせて原作をUブックスで刊行する。 本書は、スイスの作家マックス・フリッシュの名を一挙に世界的に高めた小説で、世界40カ国で翻訳刊行されている。 50歳を超えた有能な技師ウォルター・フェイバーは、ユネスコの仕事で世界を飛び回っていた。パリに向かうため豪華客船で大西洋を渡る途中、芸術を愛する女学生エリザベスと出会う。技術だけを信じ、芸術に無関心なフェイバーは好奇心旺盛な彼女に戸惑いながらも、次第に強く惹かれていく。パリ、ローマと旅をともにするうちに2人は心を通わせ、深く結ばれる。しかしエリザベスには、フェイバーの運命を大きく揺るがす秘密があった…… 映画を観た訳者の中野孝次が、映画が原作に忠実につくられていることを高く評価し、「映画を観てあらためてフリッシュが人間の根源に関わるテーマをいかに深く摑んでいたかを考えさせられた。原著は1957年に出版されたのに、いまだに少しも古びないテーマをこの小説で描ききっている。シュレンドルフ監督はその本質をよく理解して映画にしているのである」と訳者あとがきに記している。巻末にマックス・フリッシュの年譜、管啓次郎の解説を付す。

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