著者 : 伊吹秀明
第二次宇宙戦争第二次宇宙戦争
「タ、ターレット?櫓か?」土煙の中から姿を現わした巨大な櫓にドイツ兵は驚愕する。「や、やつら、火星人の兵器を手にしやがった!」オーストリア=ハンガリーの皇太子暗殺に始まった戦争の火花は、欧州にとどまらず、今や世界中に広がっていた。後世、世界大戦の名で呼ばれる戦はすべての規模で桁違いだった。むろん、兵器は言うに及ばずだ。それでもドイツ兵が見上げた兵器は、あまりにも異形であった。三本の脚で支えられた櫓。三脚とは別に金属の触手が無数にうごめく。十四年前、突如、地球に侵攻してきた火星人の兵器をイギリスは手にしていた。第一次世界大戦は一九一八年、ドイツの降伏によって終結する。が、それは混沌の時代の始まりでもあった…。
氷山空母を撃沈せよ!(上)氷山空母を撃沈せよ!(上)
昭和十七年六月五日未明、南雲艦隊の108機の攻撃隊がミッドウェー島へ発進、迎え撃つ米軍機TBFアベンジャー、B-17「空の要塞」、SBDドーントレスらを蹴散らした。米空母三隻を撃沈して勝利に酔う攻撃隊の無線機に、氷山空母発見の報が飛びこむ。わずか二時間後、南雲艦隊の精鋭四空母は壊滅、聯合艦隊司令長官山本五十六は“敵艦隊攻撃C法”を発令した。「すべての戦力を結集し、氷山空母を撃つべし」。
氷山空母を撃沈せよ!(2)氷山空母を撃沈せよ!(2)
時局は変遷し、第一次ソロモン海戦。少年向けの軍事冒険作家南郷武は、報道班の一員として、新設された第8艦隊旗艦鳥海に乗っていた。目指すはガダルカナル島ルンガ沖の米上陸船団だ。ミッドウェー海戦で日本軍の攻勢を食い止めた米軍は、早くも本格的な反攻作戦に着手し、ガ島への上陸を開始していたが、日本機の執拗な空襲で荷役作業は進まない。第八艦隊は豪州重巡キャンベラ、米重巡シカゴ等を次々に撃破し、幸運の女神は日本軍に微笑みかけていた。直後、南郷は見た。目前に陸のごとき巨大な氷山が迫るのを…。
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