著者 : 伊藤秀雄
「血に染まった月、夜空は私の胎内…」ささやかな幸福への願いが、いつしか重い呻きへと歪む時、ありふれた日常は、やがて悪夢に食い破られる……。新たな伝奇ホラー小説の誕生。 第一章 運命の星 第二章 月の絵 第三章 憑依 第四章 連鎖 第五章 夢 第六章 月の家 最終章 卵翼
木訥そのものの男「ばあどるふ」が頓死した。毒殺か?幸田露伴のミステリ「あやしやな」。少年が出会った遊女は、朝鮮に行く前に行方不明の弟と似た少年に会いたかったのだと語った、国木田独歩「少年の悲哀」。浅草松葉町に隠れ家を得た主人公が出会った謎の女。目隠しをされ逢瀬を続けたが、ついにその正体が知れて…谷崎潤一郎「秘密」。明治を彩る、バラエティに溢れた傑作短篇9編を収録。
美しい港町アデンを舞台に、恋も財も失った令嬢がある大金持ちの奇人の助力を得て、不幸のどん底から立ち直ろうと健気な大勝負に出る「銀山王」。生まれは貴なるも無銭無家の快男児・団金東次が如意棒片手に世界へ船出する、痛快活劇「世界武者修行」。世に聞こえたアラビアの航海王・乗船伯爵が問わず語りに語る摩訶不思議な冒険譚「魔島の奇跡」。血気盛んな明治の青少年から絶大なる支持を受けた冒険小説の祖による幻の傑作3編を収録。
革命で英国に避難していたフランス人貴族が、王政復古で妊娠中の妻を捨てて帰国。失意と貧しさの中で生まれた双子の数奇な運命がドラマティックな「流の暁」。偶然拾った一本の針から殺人事件を解決する「探偵」が魅力の「車中の毒針」。当時流行の幻燈を使い、見事、冤罪をはらす「幻燈」。父殺しの犯人を追い逆に罠にはまる娘とそれを助ける若者。予断を許さぬ展開が面白い「かる業武太郎」。全4編。
売り出されたいわくつきの古い屋敷。先祖の縁で屋敷を買った叔父の命で下検分に出かけた主人公は、そこで謎めいた美しい女性と出会う。次々と現れる謎の人物。首なしの死体。時計塔のからくり。…「その怖さと恐ろしさに憑かれたようになってしまって、(中略)部屋に寝転んだまま二日間、食事の時間も惜しんで読みふけった」(江戸川乱歩「探偵小説四十年」)という名作「幽霊塔」と、父親の死をめぐる意外な顛末が面白い中篇「生命保険」を収録。