著者 : 佐々木丸美
「手を下さなければ殺人ではない。私は何もしていない」偶然と悪意が重なる瞬間に“完全犯罪”を成し遂げた、春夏秋冬を名に冠する四人の少女と四つの事件。彼女たちの前に、それぞれの罪を見抜いた男性が現れる時、その心をよぎるものはー。犯罪心理と少女の心の綾を巧みに組み合わせた、全編を通して蓋然性の犯罪を扱う幻のミステリが初文庫化。『危険区域』他、全四編を収録。
山奥の旧家にひっそりと生きる沙霧。母親はある日、忽然と姿を消したという。一方、漁村の網元の家で働く自然児の沙霧。村に流れついた母親は10年前に世を去った。少女たちの心に恋が芽生えたとき、出生の秘密は明かされ、信じがたい運命が2人を結びつける。北国の自然を背景に、秘められた宿命の絆と幼い恋の行くえを綴る哀切の長編ロマン。
幼い日の記憶への憧れを秘めた孤児星玲子の小さな胸を、祖父が遺した幻の遺産をめぐる大人たちの打算が容赦なく揺さぶる。雪の札樽国道をさまよう少女を必死に守る幼な友だちの丈と愛猫とら。音もなく時間を巻きこんでいく非情な運命の糸車は、どんな明日を見せてくれるのか。雪国に芽ばえた可憐な愛の行くえを美しく描く長編ファンタジー。
北の涯に建つ謎の館。誰も足を踏み入れぬ冷い地下室に私を閉じこめた重い石の扉。あの人を愛した罰で私は殺されるのだろうか。見えざる悪魔は第三の生贄に私を選んだのだろうか。私は必死に幻の電話のダイヤルを回しつづける。既視感覚に導かれて会いえた二人を襲う不可思議な事件を通して、精神世界の神秘と恐怖を描き出す超常ミステリー。
三人のいとこたちの連続殺人の謎を秘めた北の断崖の館は、朝から春の嵐に翻弄されていた。その日、財産目録作成のため四人の鑑定家が派遣されてくるはずだった。だが、現われたのは五人。“招かれざる客”は誰か?その目的は?やがて鳴り響く大時計の三点鐘とともに忍び寄る凶々しい殺意の影。人間心理の神秘を描くサイコ・ミステリー長編。
暗く荒涼たるさいはての海。冬の嵐は信頼も理性も憧れも、殺意さえも白一色の下に埋めつくす。断崖の白い館で2年前、美しい女性の20歳の生命を奪った悪魔は、そこに集まったいとこたちのうえに、ふたたび邪悪な影を投げかける。隔絶された“雪の密室”に起こる奇怪な事件を通して、残酷な愛の行くえを綴る異色のファンタジツク・ミステリー。