著者 : 倉田タカシ
スパムメールがヒトの姿を借りて、ある日玄関先にあらわれたら?現実の少し先にあって、けれど決定的な変貌を遂げた日本社会を若者たちの視点から活き活きと描いた近未来SF「二本の足で」にはじまり、独特の浮遊感ただよう幻想小説「あかるかれエレクトロ」や、タイポグラフィを駆使した実験小説「夕暮にゆうくりなき声満ちて風」まで。柔軟にして力強いイマジネーションの結晶九編を収めた、書き下ろしを含む初の独立短編集。
もしも、うなぎが絶滅してしまったらーそのとき、わたしたちは何を想うのか?元うなぎ屋の父と息子がそれぞれの想いと葛藤を描く「うなぎばか」、とある任務を担ったうなぎ型ロボットの冒険「うなぎロボ、海をゆく」、“土用の丑の日”広告阻止のため江戸の平賀源内を訪ねる「源内にお願い」など、クスッと笑えてハッとさせられる、ポストうなぎエンタメ連作五篇。
「倫理」「社会」「政治」「信仰」「芸術」5つの異なるアプローチで、人工知能(AI)が普及した未来社会を描く。SF作家の想像力とAI研究者の最新知見が斬り結ぶ、書き下ろしアンソロジー。
3Dプリンタが驚異的進化を遂げ、建築物から料理まで直接出力出来る未来。禁断の実験に手を染めるため地球を脱出したファナティックな12人の科学者は、火星と木星の間の小惑星帯にコロニーを建設していた。“始祖”と呼ばれる彼らに産み出された“二世”の虹、霧、針、そしてその下の“新世代”を含む4人は、コロニーを離れ自らの“巣”を建設していた。あるとき虹は、母星の地球から威圧的に近づいてくる巨大構造物に圧倒される。虹たちは対策を検討するため7年ぶりに“始祖”と再会するが、それは過去に2名の“二世”を失った事件に端を発する確執の再燃でもあったー未来的閉塞環境で己の存在意義を失った異形の若者たちの惑いと決意を描く本格宇宙SF。