著者 : 児玉みずうみ
天涯孤独のイジーは2年前に亡くなった夫の精子で人工授精を受け、シングルマザーになる決意をした。ところがスイスへ行き、クリニックで診察台に横たわっていたとき、億万長者グレイソンがスタッフの制止を振りきって彼女の前に現れた。“黄金の獅子”の二つ名で知られる元伝説のレーサーで、今は会社のCEOを務める亡き夫の親友がなぜここに?憧れた時期もあったけれど、私はずっと嫌われていたはず。彼はとまどうイジーに、亡き夫は不妊で精子は自分のものだったこと、どうしても子供が欲しい精子提供者になってもいいことを告げた。「だが僕と体を重ねることを考えてほしい。よければすぐに始めよう」
素行の悪い令嬢を更生させるロンドンの私立学校の校長を辞める日、ベアトリスはイタリア富豪チェーザレに異父妹の家庭教師を頼まれた。トスカーナの大邸宅へやってきた彼女は、雇い主を見て愕然とした。私がヴェネツィアで純潔を捧げた人が目の前にいる。恋いこがれた名も知らぬ男性が、実はチェーザレだったなんて。だが彼の前まで行ったとき、再会の喜びは吹き飛んだ。この人は私が誰なのか、まったくわかっていない。野暮ったい格好のベアトリスを一瞥し、富豪は近々結婚すると告げた。もちろん、花嫁は彼女ではなかった。彼の子を身ごもっていても。
祖父の葬儀の日、ミラは別居中の夫アリストスがいるのに気づいた。1年前、二人は赤ん坊をもうけるために契約結婚をした。だが、プレイボーイのギリシア富豪が秘書と抱き合っている姿を見て衝撃を受け、彼女は家を出たのだった。契約結婚を承諾したのはアリストスが初恋の人だからだったのに。しかし再会した夜、悲しみにくれるミラに彼はやさしく、惹かれる気持ちを抑えられなくなった彼女は夫に純潔を捧げた。数カ月後、アリストスが事故にあったという知らせが入り、ミラは夫のもとに駆けつける。おなかに新しい命を宿して…。
家政婦のキャリーは人生のどん底で雇ってもらってから、4年間、リンデン伯爵マッシモに忠実に仕えてきた。すべての女性にとって憧れの的である伯爵をひそかに想いながらも、彼の華やかな恋人たちに嫉妬する資格は自分にはないと思っていた。ある日、彼女はマッシモから舞踏会への同行を頼まれる。給仕や後片づけをするのが仕事の私が、着飾って伯爵と舞踏会へ?マッシモの指示によってキャリーは美しいドレスや宝石を身につけ、夢の一夜を経験した。そのうえ彼に誘惑されて、身を任せてしまう。甘い日々はそれからも続いたーキャリーが双子を身ごもるまでは。
その日、17歳のフルリーヌは名家出身のラウルに会いに出かけた。横暴な父親が許さないので服は不格好な白いワンピースしかなく、リボンも買えないために長い髪はとかすのが精いっぱいだったけれど。だがラウルは気にせず、「君が18歳になったら結婚しよう」と言って熱烈なキスをしてくれ、フルリーヌは最高に幸せだった。父親が現れ、猟銃を突きつけて彼女を連れ去るまでは。10年後、パリで再会したラウルはあの日の約束を忘れてしまったのか、華やかな女性とデートをしては世間を騒がせる億万長者となっていた。そんな彼に、意気地なしのフルリーヌはすっかり自信をなくしてしまう。そもそも二人は住む世界が違う。結婚を夢見た私がばかだったのね…。
私が養子だと、両親はなぜ亡くなる前に教えてくれなかったのだろう?それ以来、フランソワーズは本当の両親を必死にさがしてきた。だが探偵によると、情報は厳重に封印されていて調べようがないという。そんな彼女に手を差し伸べてくれたのが、ジャン・ルイだった。三つ子の億万長者の一人である彼は、女性たちの憧れの結婚相手であり、慈善活動にとても熱心な、高潔で思いやり深い男性でもある。ジャン・ルイになぐさめられ、両親をさがす力になってもらううち、フランソワーズの心はいつしか彼でいっぱいになっていた。でも、ジャン・ルイは誰にでも親切だ。私はそれを愛と勘違いしただけ。親の顔も知らない私を、彼はただ哀れんでいるにすぎないのに…。
アネリーズはパリにある会社に就職し、忙しい日々を送っていた。1度しか会っていないCEOのニコラと彼女が交際中だという、根も葉もない新聞記事のせいでパパラッチが押し寄せてくるまでは。彼はヨーロッパじゅうの王族が結婚相手に望むほどの大富豪だ。このままでは私の存在が迷惑になる。会社を辞めて田舎に引っこもう。ところがニコラはアネリーズを呼び出し、驚くべき提案をしてきた。記事を書かせた者をさがすため、彼の婚約者を演じてほしいというのだ。もちろん自分では分不相応だからと、アネリーズは断ろうとした。けれどニコラに手を握られ、黒い瞳で情熱的に見つめられるうち、唇はいつの間にか「はい」と言っていて…。