著者 : 加川千津子
ローレライ愛の調べローレライ愛の調べ
ローレルはひとり、美しく悲劇的なローレライ伝説の地を訪れた。 ライン河畔の城には、祖母の元恋人である老男爵が住んでいる。 若き日のふたりは深く愛しあい、結婚を約束しながらも、 身分の差に引き裂かれて、ついに結ばれることはなかったという。 男爵に祖母の形見を贈り、最期まで愛していたと伝えたい。 庭にいた少年に声をかけ、導かれるまま城の中へ入っていくと、 ローレルそっくりの女性が描かれた肖像画が目に飛び込んできた。 これは昔の祖母……そのとき怒声が響いた。「なにをしている?」 振り向くと、古い写真で見た男爵に瓜二つの男性が立っていた。
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