著者 : 加賀美雅之
2002年、『双月城の惨劇』で長編デビュー。該博な知識と驚きに満ちたトリック設計、ゴシック・ミステリの香気をたたえた筆致で独自の地位を築いた。デビュー20周年に際して、未収録だった中短編をすべて収載する。
鮎哲の『黒いトランク』や清張の『点と線』の中で、刑事たちは長距離列車に乗って遥かな地へ捜査の旅に赴いていた。その後、交通機関や通信手段の発達で犯罪捜査は大きく変わったが、鉄道の特殊な空間はミステリーの恰好の舞台であり、人々の旅への郷愁はいささかも変わらない。本書はヴァラエティにとんだ名探偵たちの鉄道の旅を八編収録した傑作集!
刑務所内で大がかりな陰謀が進行しているとの内部告発を受け、パリ警察が誇る名予審判事シャルル・ベルトランは、内偵のためタントワーヌ刑務所を訪れた。そこは十字架形の獄舎に長期刑の服役者だけが収監され、断崖に囲まれた脱出不可能の監獄島。囚人の中には国際的な犯罪者で、かつてベルトランが逮捕したアレクセイ・ボールドウィンもいた。密かに調査を始めたベルトランの前に突如、驚愕の事件が巻き起こる。内部から閉ざされた部屋での殺人。そして時計塔から吊り下げられた火だるまの絞殺死体…だが、これもまだ、その後に続く惨劇の幕開きに過ぎなかった。
パリ警察が誇る名予審判事、シャルル・ベルトラン。悪魔的推理力を誇る彼に、ライン川流域の古城『双月城』で起きたある事件の捜査依頼が。不気味な伝説を持つこの城はカレンとマリア、双子の姉妹が城主をつとめていた。ベルトランが城を訪ねる直前、密室であった城内の『満月の部屋』で、首と両手首を切り取られた無惨な死体が発見された!死体はカレンかマリア、どちらかのもの…。ベルトランの好敵手、ベルリン警察のストロハイム男爵も登場、熾烈な推理合戦のなか、新たな惨劇が。