著者 : 北方謙三
金軍総帥・兀朮が梁山泊の北に展開すると同時に、撻懶の軍も南進を始めた。戦いの幕がついに切って落とされた。呼延凌率いる梁山泊軍との全面対決となる激突だった。史進の遊撃隊の奇襲により、大打撃を蒙った金軍は後退し、戦いは収束。梁山泊は若い宣凱を単身金に差し向け、講和の交渉に入った。一方、岳飛は来るべき戦いに向け準備を開始する。それぞれの思惑が交錯し、血の気配漂う第三巻。
淮水で金軍の兀朮が岳家軍と、ほぼ同時に撻懶が梁山泊軍と交戦するが、それぞれ退く形で一旦収束する。兀朮は楊令の遺児・胡土児を養子に迎え、南宋の宰相に復帰した秦桧は漢土の統一を目指し奔走する。一方、梁山泊の新頭領・呉用からの命令は相変わらず届かず、新体制下の模索が続いていた。子午山では妻・公淑の死を想い、王進は岩の上に座すー。静かに時は満ち、戦端の火蓋が切られる、第二巻。
病死した戦友の息子・野本精一から金の無心をする電話がかかってきた。私は何も聞かず借金を肩代わりしたが、精一はある男に怯えていた。その男は私もよく知るN市の酒場“ブラディ・ドール”のオーナー、川中良一だった。川中は精一を殺すという。だが、あえて私は精一を守ることにした。戦友の息子という、ただそれだけのためにー。S市の実力者として君臨してきた久納義正が、川中とぶつかり合う、不朽のハードボイルド長篇。
「替天行道」の志を受け継いだ楊令の闘いと、熱き漢たちの生き様を壮大なスケールで描いた、北方謙三の『楊令伝』。文庫版全十五巻完結を記念して、公式読本が文庫オリジナルで登場。地図や年表、厖大な登場人物たちを網羅した人物事典、著者のエッセイや対談、さらにはここでしか読めない担当編集者のウラ話など、『楊令伝』の世界をもっと楽しむためのコンテンツが満載。
グレーのスーツ、地味なネクタイ、きちっと刈った髪。よく独り言を呟く神経質な男。一見普通に見えるが、田中という、棒っきれのようにしか生きられないやくざ者だ。強欲な親分の下、苛立っていた。素人をいたぶり、若い衆がやるようなことをする日々。先頭に立って抗争を乗り切り、跡目をとったつもりになるが、分家を言い渡される。のし上がらねばならぬと肚を決めた。文体の実験的な試みが話題を呼んだ記念碑的な連作短編集。
東京は下町、向島の料亭に生まれた川田周一。十四歳。母はすでになく、父も別居していた。義兄が家を出て、二人の異母姉と周一だけになった。刑事や物騒な連中が来るようになり、店を嵐の気配が包む。そんな中、周一は煙草や酒を覚え、喧嘩を女を知っていく。しっかり眼を開けていろ、との板前・久我の言葉を胸に、男という向こう岸へ、泳ぎ渡りはじめた少年の成長を描いたハードボイルド青春小説。
宋建国の英雄・楊業の死から2年。息子たちに再起の秋が訪れる。楊家軍再興ー。六郎は、父が魂を込めて打った剣を佩き、戦場へ向かう。対するのは、強権の女王率いる遼国の名将・石幻果。剣を交えた瞬間、壮大な悲劇が幕を開ける。軍閥・楊一族を描いて第38回吉川英治文学賞に輝いた『楊家将』の続編でありながら新展開。『水滸伝』『楊令伝』に登場する宝刀「吹毛剣」の前史がここにある。
闘うことでしか生きられない者たちに勝敗を決する秋が来た。「吹毛剣」を手に戦う六郎に、父楊業の魂が乗り移る。その剣に打たれたとき、遼国の名将・石幻果の記憶がにわかに蘇る。運命に弄ばれた男たちの哀しみを描く慟哭の終章。乱世の終わりを彩る壮絶な物語が、いま静かに幕を降ろす。『水滸伝』に登場する青面獣楊志、楊令が佩く宝刀との奇しき因縁も明らかになる「北方楊家将」完結編。
京都・勧学院別曹の主、藤原純友。坂東への旅で若き日の平将門との邂逅を経て、伊予の地に赴任する。かの地で待っていたのは、藤原北家の私欲のために生活の手段を奪われ、海賊とされた海の民であった。「藤原一族のはぐれ者」は己の生きる場所を海と定め、律令の世に牙を剥く!渾身の歴史巨篇。
承平・天慶の乱の首謀者として将門とともにその名を知られる瀬戸内の「海賊」純友。海の民を率い、ついに朝廷の水軍との対決が!夢を追い、心のままに生きた男の生涯を描く歴史巨篇。
最終決戦の秋が訪れる。童貫はその存在の全てを懸けて総攻撃を仕掛けてきた。梁山泊は宋江自らが出陣して迎え撃つ。一方、流花寨にも趙安が進攻し、花栄が死力を尽くし防戦していた。壮絶な闘いによって同志が次々と戦死していく中、遂に童貫の首を取る好機が訪れる。史進と楊令は、童貫に向かって流星の如く駈けた。この国に光は射すのか。漢たちの志は民を救えるのか。北方水滸、永遠の最終巻。
ベストセラーとなった北方謙三の『水滸伝』。その読本がついに文庫化。人物事典や年表といった貴重な資料をはじめ、著者のエッセイ、編集者からの手紙などレアな文章が満載。読めば北方水滸の全てが解るファン必携の一冊。文庫化にあたり、著者から読者へのメッセージや、司馬遼太郎賞受賞記念エッセイなど、さらに特別なコンテンツを追加。100ページ以上増補した完全版。
童貫軍の猛攻撃が始まった。呼延灼は秘策をもってそれを迎え撃つ。梁山湖では李俊ひきいる水軍が、巨大な海鰍船と対峙していた。梁山泊に上陸される危険を背負いながら、幾百の船群に挑む。一方、二竜山も陥落の危機を迎えていた。趙安の進攻を一年以上耐え抜いた秦明は、総攻撃を決意する。楊春、解宝が出撃、そして、青面獣の名を継ぐ楊令が初めて騎馬隊の指揮を取る。北方水滸、死戦の十八巻。
童貫元帥、奔るーー 童貫とほう美がついに双頭山に進攻する。鍛え抜かれた精兵を、董平らが迎え撃つ。一方、高廉の軍と致死軍の間にも最終決戦が迫っていた。そして魯達の身に、異変が近づくーー。(解説/高井康典行)