著者 : 南條範夫
徳川11代将軍家斉の時代。時の老中・松平信明を伯父にもつ、明朗な青年剣士・月影兵庫。彼は伯父の秘命を帯びた道中や、相棒の安との旅路で事件に遭遇する度に、鋭い洞察と武芸を駆使して謎を解く。大雨で足止めを食らった人々が滞在する旅籠で、殺人が起こる「血染めの旅籠」。盗賊が豪商から盗んだ千両箱の在処を探す「偉いお奉行さま」など、剣豪小説の名手が贈る傑作17編。
この財産、めったな奴にやれるものかー。河原専造は余命半年と宣告された。唯一の相続人は年若き後妻。しかし彼女が遺言状の有無を弁護士に問い合わせていたことを知り、専造は激怒。過去付き合っていた四人の女が生んだ子供たちを探し出し、遺産の相続人に加えることにした…。莫大な遺産をめぐって人間のあくなき欲望が絡み合う著者の代表作。江戸川乱歩が激賞した名作、ついに復刊!
純真で無垢な少年の姿は、大人の心を洗い清めてくれるーだが、誰しも少年だったころの昔日を思い返してみれば、他者への憎悪や妬み、邪悪で穢れた心の存在も否定できない。本書は美しくも危険な少年たちの光と闇をテーマにしたミステリーを集めたアンソロジー。かの江戸川乱歩が憧憬する村山槐多の画を巻頭に、推理文壇の名手たちの珠玉の傑作を厳選!
「文化的遺産はすべて、それをめぐる人とのかかわり合いにおいてこそ、後世の人々の心をより強く打つものなのだ」隠密が潜み、裏切りが行われ、亡霊がさまよう。-北は松前城から南は鹿児島城まで、全国三十の古城名城にまつわる秘話裏話伝説記録を、そこに込められた哀しみと憤りと、怨念と呪詛と、闘いとその血汐とともに鮮やかによみがえらせる。
明治維新の英傑でありながら、新政府に叛旗を翻した男・西郷隆盛。歴史に大きな足跡を残しながらも、さまざまな謎に包まれたその実像を、盟友や家族といった周囲の人々の目を通して浮かび上がらせた傑作短編集。江戸無血開城に至るまでの勝海舟との交流(海音寺潮五郎「西郷隆盛と勝海舟」)、西南戦争にも従軍した息子・菊次郎から見た父の意外な姿と親子の絆(植松三十里「可愛岳越え」)など、五編を収録。
斎藤道三、滝川一益、吉川元春、宇喜多直家、丹羽長秀など全十二将、いずれ乱世に生を受けながら、天下を手中に収めえなかった者たち。なぜ彼らは敗者となったのか、明暗を分けた時はいつなのか。各々の生涯を描く時、そこに浮かび上がるのは鮮やかな「敗者の矜持」。生か死か。手に汗握る戦国・敗北の記録。