著者 : 吉岡道夫
東京の高級住宅地・自由ヶ丘にマンション一棟を所有している29歳の笹岡夏美が自室で、下着もつけず裸同然の姿で殺された。その後千葉県市川市で中年の女性書家・木村初江が殺されているのをフリーライターの叶雅之が発見した。殺された二人は叔母姪の関係で犯人は同一と推測された。叶は事件のひと月ほど前、霧深い納沙布岬で偶然出会った女性に強く印象づけられていたが、その女性によく似たひとが被害者の身近におり、事件と何らかの関係があるように思われてならなかった。書き下ろし長編ミステリー。
画家の真野亮介は、T電機工業に勤める親友の向井潤三の怪死に驚いた。向井は、M鉱山の廃坑内で落盤による圧死体となって発見されたのだ。亮介は、向井から数日前に謎の鍵を託されて不吉な予感していたが、それにしてもいったいなぜ?しかも向井は出張中のはずである。向井の事故死を信じられない亮介は、美人OLの神殿真由美、易者の影山真改という強力な助人を得て真相を追うが、やがて第二の殺人事件に巻き込まれる…。巨悪の壁に挑戦する男たちを、情感あふれる筆致で描く傑作サスペンス・ミステリー。
雑木山の土塊の中から現われた髑髏。天を仰ぐその眼窩は、追いかけてくる鬼火から逃げ続けた30年を、ただ虚ろに眺めていただけなのだろうか。一人のスターの死をきっかけに過去の事件が暴かれる。「救けて、直ちゃん。怖いの…」非痛な声を残して死んだ大女優は他殺か自殺か。謎を解く鍵は赤一色に塗られたキャンバス。書下ろし長編ミステリー。
鯉師・戸村吾一が秘かに育てあげ、次期全日本グランド・チャンピオンをねらう〈稲妻〉。この名鯉にかかわる人々に次々と起こる不可解な事件。錦鯉に寄せる鯉師の執念と、権力・権益を追い求める政治家の妄執が、メビウスの環の上を果てしなく走り続ける。書き下ろし本格ミステリー。